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珈琲の香りのように  作者: 要
7/7

ブルーマウンテン 〜酸味と苦味の調和、心地良い口当たり〜

「コーヒー、飲むかい?」

 休日の昼下がり、リビングで読書をしていた妻に声をかけた。

 いつも通り、妻の返事を待たずにお揃いのコーヒーカップを食器棚から取り出す。

 食品庫から先日購入したブルーマウンテンの豆を取り出して、保存容器に移す。芳醇なブルーマウンテンの香りが漂ってきた。

 この瞬間がたまらない。幸福とはこういう何気ない瞬間に訪れるのかもしれない

 ミルの設定を中挽きに合わせ、ゆっくりとハンドルを回す。部屋いっぱいにコーヒーの香りが広がった。

 ペーパーフィルターをセットして、ゆっくりとお湯を注ぐ。ジャグに落ちるコーヒーを眺めながら、私は彼女の事を考えていた。

 あの夜の出来事は、一体何だったのだろう。

 夢のような、現実味を帯びない時間。

 誰かに否定されれば、無くなってしまうのではないかとさえ思えるほど、儚く淡い出来事。

 今となっては彼女が何を求めていたのかを知ることはできない。そもそも、私自身あの感情の正体を、掴みきれてさえいないのだ。

 一時の気の迷いと片付けてしまえば、それまでなのかもしれない。

 しかしそこには、彼女と私が共有した真実があったはずだ。

 それが、日々足りないと感じていたものの一部なのかは知る由もないが。

 今後、家族への償いは必要だろう。

 これ以上家族を傷つけないために、何とか真実を伝えることをせずに、行えることを考えていかなければならない。

 独善的と言われたら、それまでなのかもしれないが、罪の意識に苛まれながら生きていくのが私の贖罪なのだろう。

 

 「幸せか?」と尋ねられれば、「幸せだ」と答えるだろう。

 幸せの意味を噛みしめながら。


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