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【02】

父さまとお風呂――


閣下とミニ閣下、一緒に風呂に入る

体や頭を洗う間は、別々の浴槽


ミニ閣下「ちぇやややや!」


ミニ閣下は大人の真似をしたくて仕方ないお年頃

ですがほとんどのことは出来ません

全身を洗うのだって無理


頭のてっぺんに手届かないしね――シェイカーの悲劇


でも逆に言うと

親が同じことをしたいたら満足するわけです


ここにいらっしゃる閣下は

生まれた時から王侯なため

他人に全身を洗われることになれている

浴槽につかり、体を洗わせ、髪を洗わせ

その姿は偉そうの一言に尽きる


もちろん偉いんですが


召使い「痒いところはございませんか」


父親が体を洗われているのを別のミニ浴槽から見ているミニ閣下は

黙って体を洗わせるわけです

本人は父親の真似ができて嬉しい


ミニ閣下「ちぇややや!」

召使い「(表情だけ見てると、全身不愉快そうなんだけど……)」

閣下「痒いところはなさそうだ」

召使い「然様でございますか」

ミニ閣下「ちぇややややああああ!」


閣下とミニ閣下は一緒に風呂(浴槽別)に入るのですが

体の大きさが違うので

洗い上がり時間に差が


ミニ閣下は風呂が一応終わると

イヴ考案のライフジャケットを装着され

召使いが閣下の浴槽まで連れて行く


それと同時にストローとシャボン液が閣下の手元に


ミニ閣下「ちぇややや!(お父さま、お願いします)」


閣下、召使いに髪を洗わせながら、シャボン玉作製

ミニ閣下、閣下が作ったシャボン玉をきゃっきゃしながら潰す


……を延々と繰り返す


ミニ閣下「ちぇやややや!」


喜ぶミニ閣下と、適量を吹いて作ってやる閣下

浴槽ではしゃぎまくって、短い手を振り回して

シャボン玉を割っていきます


ミニ閣下「きゃ!……」

閣下「麻酔でも、こうは寝ないものだが」


一瞬にして電池切れを起こしてお休みに

閣下が持ち上げる


ミニ閣下、おしげもなくプリケツを晒すの図


召使いが受け取り、石鹸を洗い落として

着替えを――


とっても楽しげな親子の入浴シーン


親子の中では「楽しい! お父さま、もっとつくって!」「そうか、それは良かった。少し待て。すぐ作る」なのですが


第三者の目には

不機嫌な中年男性が嫌々シャボン玉を造り

中年男性そっくりな幼児が

年齢(0歳)に似合わぬ厭世を背負って割っている――ようにしか見えない



執事「写真撮ったけど、喜ぶのは妃殿下だけ!」


……実は執事も喜んでるはず


執事「微笑ましいなんて、思ってませんからね!」


**********


儚い詐欺もミニ閣下を週一くらいで見に行きます

最初は「そんなにマメに見なくても」と言っていたのですが

イヴに「ちっちゃいうちって、凄い成長速度なんですよ!実感してください!」と力説され――

生まれた翌日に見て、それから二週間後に出産祝いを持って改めて訪問したら

びっくりするくらい変わって……


儚い詐欺「生まれた時もあなたそっくりでしたが、よりあなたに近づきましたな」


生後二週間と一日の嬰児とは思えぬ陰鬱さ


閣下「わたしも驚いている」


容姿はともかく、想像以上に成長していたことに驚き

以来、週一くらいの間隔で顔を見に行くことに


容姿はともかく、中身は元気な天才お子さまなので――容姿と雰囲気はともかく


ミニ閣下はありとあらゆる英才教育を楽しく施されており

王族にとってもっとも重要な――


閣下「王族ではないが」


……名ばかりの伯爵はそのように申しておりますが

世間的には王族です。王侯貴族階級としては不満もあるかもしれませんが


閣下「不満があるならば、住処を地獄に変えればよかろう。送ってやるのは吝かではないぞ。生きたくば、言うが良い」


…………閣下と親族の確執という名の一方的虐殺はさておき

閣下の長男である以上

軍人としての教育は施されるのです

専制君主だろうが、立憲君主だろうが

実権あるなしに関わらず、元帥になるのはこの人なので


ミニ閣はも、ちぇややや、ちぇやややや!言いながら

軍事を肌で学んでおります――実際の兵隊や空砲を使った小規模模擬戦など


早すぎねえ? 英才教育たる所以です


儚い詐欺「元気そうだな」

ミニ閣下「ちぇやややあ!(おじしゃん、抱っこ)」


儚い詐欺、閣下と違い言葉を理解できないが

なんとなくそうなんだろうな……と抱き上げる


儚い詐欺「ペガノフ、筋が良いってパウルのこと褒めてたぞ」

ミニ閣下「ちぇああああ、ちぇあ!ちぇあ!!(任せておじしゃん!指揮は陣頭で執らせてもらいますけど!)」


儚い詐欺「おい、やめろ。前戦に立つな」←言葉は分からないが瞳の輝きが、完全にイヴの「お任せください!」になっていたので、察した


ミニ閣下「ちぇややややや、ちぇああーーー(わかりました、おじしゃん。ではパウルは殿を務めます)」


儚い詐欺「最後尾も駄目だ。お前は総指揮官だ。古代の王さまじゃないから、戦場に出るな。司令室から司令を出せ。間違っても戦場に向かうな」←言葉は分からないが瞳の輝きが、完全にイヴの「わたしがやります!」になっていたので、察した


ミニ閣下「ちぇややや!(パウルがいるところが、最前線!)」

儚い詐欺「そうはいっても、母親に似たら……気づいたら最前線になってたって事になるんだろうな……からだ鍛えておけよ、パウル。きっと強くなれるからな」

ミニ閣下「ちゃちゅちゃやややや!(パウルはもう剣で戦えるんですよ!)」


それ長ねぎだけどな


イヴ、後々の戦闘において、安全圏にいたはずなのに「あれ? 奇襲部隊? いくぞ!」

って事が、何度か――儚い詐欺さんの超激怒ぶりは、お察しください


**********


ざっくり――手探りで保育園作っている状態

保育園(仮)は司令本部内にある

ミニ閣下はお世話をする人は大勢いるが

保育園(仮)の運用のために

子供が必要なので

ミニ閣下も偶に保育園(仮)へ――という流れ


親子三人で四頭立ての無蓋馬車(私物)に乗り

騎兵隊八名(私物)を連れて司令本部へ


ミニ閣下が来る日

先に登庁している場合に限り、儚い詐欺がホールで出迎えてくれる


大体、出迎えてくれますけどね

あ、一応、官舎に帰ってます

もちろん本部に泊まることも多いのですが――


イヴに抱っこされているミニ閣下に

儚い詐欺が頬をくっつけて挨拶


ミニ閣下(おじしゃん! おじしゃん!)


表情はアレですが喜んでいるミニ閣下

その後、イヴがミニ閣下を儚い詐欺に渡し――


イヴ「伝い歩きが上手くなってきたんです」

儚い詐欺「そろそろ歩けそうってことか?」

イヴ「はい! 親が言うには、もうすぐだろうって」

儚い詐欺「そうか」

イヴ「すっごい楽しみで。歩けるようになったら、両サイドで手をつないで散歩しましょうね、閣下」

閣下「そうだな」

イヴ「キース閣下も!」

儚い詐欺「考えておく」


ぞろぞろと付いてきている護衛たちは「両親身長が……って特にクローヴィス閣下、足が長すぎて、さすがに手が届かないだろう。無理じゃね?」と思ったものの――


それはそうと、前述の


>両サイドで手をつないで散歩

イヴは儚い詐欺を誘ったわけですが


イヴ初心者(?)な護衛たちは

「イヴと儚い詐欺とミニ閣下」で想像しましたが

イヴ上級者たる儚い詐欺は

「閣下と自分(儚い詐欺)とミニ閣下」のことを言っていると

瞬時に正解する――まさに格の違い



イヴは三人が仲良く歩いている姿が見たい


執事「そのワンシーンをお喜びになられるのは、妃殿下と……パウルだけ……かと」

懐刀「…………」


話を戻して――


本部内にある保育園(仮)に到着し、ミニ閣下と別れ各自仕事へ

閣下は公用馬車に乗り換えて大統領府

ちなみに本日の帰宅は深夜なので、今日はもう息子と会うことはない

イヴも寝ちゃってる可能性大


閣下「…………」←完全に世界滅ぼせる顔になってる


……という、この世界ではとくに珍しいことではない事柄はさておき


ミニ閣下を保育園(仮)に任せたあと

儚い詐欺は不憫と会って雑談し

その後、不憫は保育園(仮)を巡回

未知の領域だとか、軌道に乗せるためには色々とデータが必要だとか

いろいろあるけど

「閣下の息子がいる」となると……ね


部下を伴い保育園(仮)を覗くと

ミニ閣下が父親譲りの難しい顔で

伝い歩きをしていた


不憫「なんか、人間らしくなったな」


伝い歩きをしていたミニ閣下


ミニ閣下「ちぇちゃややや!(美中年(イケオジ)だ!)」


不憫に気付き


ミニ閣下「ちぇややややや!(美中年(イケオジ)! みるがいい!)」

保育士「すごいぞ、パウル! 初歩きだ!」


ミニ閣下、自慢げに手を離して初歩きを美中年に捧げる――


不憫「やめ……ばっか! いや、い、いいぞ! パウル!」


ミニ閣下の初歩きは不憫を目指す――イヴが楽しみにしていると儚い詐欺に聞かされたこともあり

「やめろ歩くな、馬鹿野郎! そいつはクローヴィスに初披露しやがれ、このガキ! 分かんねーのかよ! ぼけ!」と叫びたかったのだが


ミニ閣下「ちぇいややや! ちぇぃややや!」


子供は褒めると伸びるということを、身を以て知っているので(声楽)

止めろともいえず

まして「やめろ!馬鹿ガキ!」とも叫べず


不憫「おい、貴様等! 全員でパウルに声援を送れ!」


部下全員を使って声援を送る……普通の子供ですと

怒鳴られていると勘違いして泣き出しそうな声援が……でも保育園(仮)に預けられている子供は全員軍人の子ということもあり慣れていた

だから他の子達も、おじさんたちの声援に呼応して「ぱうゆ、がんびゃれ!」と送る

ミニ閣下もペガノフたちからの称賛……じゃなくて声援をいつも受けているので


ミニ閣下(もう歩くの面倒だけど、お前たちの期待に応えてやろう!)



ミニ閣下は閣下にはないものを持っている。それは「サービス精神」――閣下「サービス?なんだ、それは」



声援を受けて頑張りまくって歩き――


ミニ閣下「ちぇいやあああ!(美中年(イケオジ)のところに、無事到着!)」


ミニ閣下、不憫のズボンを掴み「やりきったぞ!」と良い笑顔……のつもり

「褒めろ」と見上げたミニ閣下は、複雑な表情の不憫を見る……ことはなかったが

めっちゃ複雑な表情……からの


不憫「よくやった!」


褒めた。それはもう格好良く、そして力強く、やる気を呼び起こす、それ――褒められたミニ閣下、サービス精神が爆発


ミニ閣下(そんなに喜ぶなら、もう一回見せてやるな! 美中年(イケオジ)!)


這い這いで引き返して再び伝い立ちしてからの……


その日、イヴのところに不憫から「すまん」ということで

花束とお菓子の詰め合わせが届けられた


イヴ「いや、そこまで気にしなくても……」

ミニ閣下「ちぇややややや!」


**************


美中年不憫から「パウル歩いたぞ」と聞いたイヴ

「歩く姿を見られるかも!」と楽しみにして保育園(仮)へ


イヴ「パウル」


声を掛け――


ミニ閣下「ちぇやややあ!(お母さま!!)」


全力這い這いダッシュによる

最大速度でイヴの元へ


ミニ閣下「ちぇぃやあ! ちぃややや!(お母さま! お母さま!)」


足にがっつりと抱きつき

満面の笑み(見た目は……)でお母さま大好き――


あれですよ、大好きなお母さまの元へ

時間を掛けてゆっくりと歩いていくなんて選択はないのです

(不憫が嫌いというわけではありません。単にイヴが大好きなだけで)



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