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サプライズな朝の姫子<姫子の毎日>

作者: 紗 織

 日の出。まだ世界が明るくなり始めたばかりの時刻にその女は目覚める。


 「ああ、 いつもの時刻なんだな。」

そうつぶやくと布団から出てくるのだ。

 早起きだなと思うかもしれないが、この女にとってこれは一番楽な寝起きなのである。 


 日の出の時刻になると自然と目が覚めるようになってもう何年経つのだろう?最初は早く目が覚めてしまったことに後悔し、目をつむり眠る努力をしたものだった。しかし、どんどん体が起きる準備を始めてしまうのだ。トイレに行きたくなり、我慢できなくなって仕方なく行くと、もう布団に入っても体が温かくならず、眠ることは全く出来なくなってしまうのだ。じゃあ、トイレを我慢すればいいかと頑張ってみても、結局苦しくなってきて、それも眠ることは出来なくなってしまうのだった。

そんな抵抗をするのを止めてみたら、思いのほか気分良く起きている自分に驚き、その日から目が覚めたらスッと布団から自然に出てくるようになったのである。


「おはよう。」

水槽に泳ぐ金魚に挨拶をして一日が始まる。今年9才になる金魚は大きく育ち、最初小さかった水槽も今では金魚に合わせて大きな物へと変わっている。体長20㎝にもなった子を可愛いと思いつつ、でも心は通わない事に少し不満を抱きつつ、世話を続けている。犬や猫を飼えば、心の通い合った関係になれるのかな?とも思うが、月に2回の水替えをすることも大変な作業と思う女にとって、その新たな関係を築く事は、とても無理な話な気がしてなかなか実行することは出来ないでいる。


 金魚にご飯をあげた後に洗濯機を回し、朝食の準備をして、テレビ番組を見ながら朝食を食べる。こんな単調な事を、番組の内容の変化で何となく楽しく過ごせている自分が好きである。


 何ということでしょう。突然いつもと違う出来事が起こってしまった。なんと番組でアナウンサーさんから自分の名前を呼ばれてしまったのである!

 「先週のプレゼントの当選者は、東京都在住の純情 姫子さんです。おめでとうございます。」

自分でいつも恥ずかしくなってしまうこの名前。早く結婚して苗字を変えたいと思っていた時期もあったが、姫子という名前とは一生付き合っていかなくてはいけないんだと思うと(決して言い訳だと思わないでね<姫子の心の声>)ついそのままの名前で生きていく人生になってしまったのだが、年齢が画面に出てしまったのは、流石に恥ずかしくなってしまっていた。

 「60歳になっていても、純情 姫子。いいじゃない、別に。」誰に言うわけでもなくつぶやいた後、送られてくる美顔器の効果はあるのかしら?とワクワクしているうちに、また楽しい日常に戻っていったのであった。

                                     おわり


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