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英領・日本帝国  作者: 扶桑かつみ
7/9

備考01:日本地域の概要と21世紀初頭の現状

 ※分かり易さを優先するため、一部は我々の世界からの視点で記していくのでご注意ください。

・独立後の日本:


 経済や産業面では、1945年の独立時点で史実の1900年前後ぐらいと似ている。

 つまり我々の世界の約半世紀の遅れとなる。

 しかし第二次世界大戦のような破壊と浪費がないので、20年分はショートカットできる。

 国内人口も1920年代のレベルになる。

 またイギリスで高等教育を受けた知識層が一定数いるなど、近代化すべき要素は最初から辛うじて保持している。

 工業技術なども足りない分野は技術そのものを輸入すればいいので、数十年の遅れがあるわけではない。

 二流なのは当然だが、植民地から独立したばかりと考えれば非常に良好な状態でのスタートとなる。

 ただし、制度や単位系はイギリスと同じ基準となる。

 

 独立当初はイギリスの影響が強いが、米ソ冷戦構造の中でアメリカの軍事的、経済的影響力が一気に強まる。

 イギリスが世界国家として大きく没落する1960年代以後は、完全なアメリカの影響下に入る。

 日本の通貨もポンドではなくアメリカ・ドルに連動するようになる。

 

 そしてアメリカ経済に深く連動する形で産業と経済が発展する。

 また、独立後はアジア近隣で頻発する戦争、紛争による戦争特需で外貨を稼ぎ、通常での経済活動も加わって、産業は比較的順調に発展する。

 

 ちなみに、この世界の日本の企業に三菱の名はない。

 薩摩、長州に繋がる政治家や名家の系譜もほぼ存在しない。

 イギリスに破れ、滅びるか没落させられている。

 薩摩、長州は、長らく日本での後進地域とされる。

 企業は、江戸時代から続く鴻池、三井、住友などと、20世紀に入って勃興を始める企業群(民族資本)が中心となる。

 また企業の体力、基礎技術力などが欧米に比べると非常に弱くなる。

 また名家という点では、日本各地には江戸時代末期からの大名(日本貴族)が特に地方の外様大名を中心にして残され、イギリス統治中は地方を軸にして日本人の自治が進んだため地方の力が強く、大貴族の城下町には古くからの前近代的な工業拠点もある。

 


 1970年代ぐらいからは、アメリカ国内の産業転換の影響を受けて西側の生産拠点として本格的な産業発展、経済発展を開始し、1980年代に所得の大幅な上昇を達成する。

 発展を促すために、外資も大幅に導入される。

 この頃に「アジアの奇跡」もしくは「日本の奇跡」と呼ばれる。

 無論、我々の世界で日本に連動して発展した東アジア諸国の発展も遅れているので、時期こそ違えど東アジアで一人勝ちな状態に大きな変化はない。

 

 アメリカ経済と深く連動する事でアジアの他の国々に先んじることに成功し、新興国の雄となる。

 だがあくまで新興国である。

 先進国ではない。

 

 1988年には東京オリンピックを開催するまで発展するが、金融面など国内には不安定な面も多く、経済的には21世紀初頭でも完全には先進国に含まれてはいない。

 

 21世紀初頭では、史実の1980年代前半ぐらい(※プラザ合意、バブル景気より以前)の経済状態にまで発展している。

 史実との近似値は、東アジアのNIES諸国に近い状態で、1980年代辺りで高度経済成長に突入している。

 我々の世界の韓国や台湾が一番の近似値となるだろう。

 

 独立後は自らの通貨(両(ryou)及び文(monn)を作り、当初はポンド・スターリングと連動したが次第にドルへの傾斜を強める。

 21世紀初頭は変動相場制で、21世紀初頭の平均レートは2両40文=1ドル程度になる。

 当然だが、世界経済に大きな影響を与える力はない。

 

 21世紀初頭のGDPは1兆7000億ドル程度で、イタリアに次ぐ規模。

 十年後にはイギリス、フランスを追い越してドイツに並ぶと言われている。

 主要国会議や財務相会議では、90年代後半から「プラス枠」として会議に呼ばれるようになっている。

 我々の世界での、「BRICsブリックス」に近い立ち位置となる。

 

 21世紀初頭の時点でも、新興国から先進国に向けての発展は継続しており、高い消費力によって世界経済の牽引役の一国となっている。

 2020年までは順調なGDPの成長が見込まれている。

 

 ただしヨーロッパ諸国に比べると省エネ技術で遅れ、産業合理化もまだ不十分である。

 先端産業など様々な面でも、先進国にはまだ遠い。

 


 国内の総人口は、1980年代に一億人を突破。

 これも、独立後しばらくを国策としての多産政策を実施した結果となる。

 多産政策を行ったのは、国内での労働力確保のため。

 

 21世紀初頭でも人口拡大は世界平均レベルで、総人口は約1億2000万人。

 2020年に1億3000万人を超え、以後増加率が鈍化して2030年には1億4000万人に到達すると予測されている。

 そして以後は、完全な停滞期もしくは人口減少に入るとも予測されているため、既に少子化政策が議論され始められつつある。

 

 一方では、イギリス統治が始まった1870年代から以後約百年間、1970年代まで日本から海外への移民が続き、日本列島からの移民者の総数は約1500万人に達する。

 日系人として各地で増えた移民人口は、1980年代の時点で約4000万人にも上る。

 イギリスのネットワークを使って、世界に広く移民できた結果だった。

 また北米西岸への移民は、江戸時代後半の開国による影響も大きい。

 

 最終的な日本人及び日系人の総数は2040年頃に二億人に達すると見られ、以後停滞もしくは減少すると言われる。

 

 移民は主に南北アメリカ大陸に流れる。

 最大規模なのは大戦後に移民がさらに増えたアメリカ合衆国で、約1500万人以上(アメリカ国民の約5%。

 西海岸では25%に達する)となって数において有力民族化している。

 アメリカ国内ではヒスパニック、黒人に次ぐ非白人民族の代表の一つとなり、教育熱心なため知識階級や有力者も多い。

 ただし白人勢力の差別は、黒人同様に21世紀初頭現在でも見られる。

 

 また英連邦のカナダやオーストラリアにも、一定数の日系人が居住する。

 それぞれの総人口の一割程度が日系人で占められている。

 イギリスの庇護で名目上の独立を維持したハワイ王国、フィジー王国の半数は日系人と琉球系人で、かなり日系国家と化している。

 フィジーでは先住民族との間で民族対立にも発展している。

 他の太平洋地域への移民も多く、東部ニューギニア、北ボルネオなどの元イギリス領にもかなりの数が移民した。

 

 イギリス領の香港、シンガポールにも早くから労働移民や商業目的で居住するよになっており、富裕層の比率が高いためかなりの影響力を持っている。

 

 また20世紀に入って英語圏(英連邦)への移民が難しくなると、南米への移民が爆発的に増大した。

 移民の過半はサトウキビやコーヒー栽培のための奴隷に代わりうる安価な労働移民を求めたブラジルに流れ、21世紀初頭には約1400万人(総人口の8%)もの日系人が暮らし、知識層や富裕層の比率が高いためブラジル国内の有力民族化している。

 

 なお、日本での公用語は日本語とされているが、英語も都市部や知識階級に広く普及して、国としても第二公用語に指定して小学校から英語教育を行っている。

 海外との交流のために英語を学ぶ傾向も強い。

 日常会話も日本語と英語の双方が使われている場合が多く、高所得者は日本語、英語双方を話せるのが当たり前となっている。

 また日本語自体は江戸時代に日本各地で小さな差があったが、独立後の国家政策として「標準語」が使われるようになっている。

 


 日本の国土面積は、約29万平方キロメートル。

 江戸時代と違って、V.ファー(北海道)と琉球(沖縄)を有しないので、領土はややこじんまりとしている。

 ただし、かつてはアメリカかイギリスの委任統治領だった小笠原諸島など遠方の島を国力の増大に伴い日本領として編入しており、経済水域としての海洋面積はかなり広くなっている。

 小笠原諸島などが日本領となった背景は、現地の日本人移民が多かったからで、これは太平洋の島嶼の多くに当てはまっている。

 1990年頃までは、史実ではドイツが領有した地域もイギリスが日本支配の余録として植民地化していたため、日本人移民が多かった事からそのまま日本領とされていた。

 ただし南洋の多くは、1990年頃に相次いで独立。

 一部が住民投票で日本に残った。

 その多くは英連邦に加盟している。

 

 冷戦時代の近隣関係は、隣接する琉球王国とV.ファーとの関係は良好だが、同じく隣接する朝鮮王国との関係は感情的反目が強いため最小限でしかない。

 冷戦構造崩壊後は、ロシア、北亜との関係も一定以上に発展している。

 

 中華人民共和国とは一般程度の外交関係は結んでいるが、同国が膨張主義を取る事が多いため友好的とは言い難い状態が続いている。

 これは日本が、海軍力を重視して近隣のシーレーン防衛に強い影響力を持っていることが影響している。

 


 国内は常に安定しており、民意も穏やかな面が多く、国威発揚などで世界に挑戦するという事はない。

 しかし近隣情勢が緊迫している事が多く、国防は常に重視されている。

 

 国際政治上では英連邦の一角として、軍事、経済面ではアメリカの影響国として、そして広義の意味での環太平洋の一員として過ごす。

 国民の間にも、アジアの一角としてよりも英連邦、太平洋国家の一角という向きが強い。

 

 21世紀に入って隆盛を始めた中華地域には迎合せず、アメリカの軍事的庇護を受けながらも英連邦としての態度を取る。

 同じ英連邦に属するオセアニア諸国、カナダ、マレーシア、シンガポールとの関係も強い。

 現在では、英連邦諸国を中心にした太平洋共同体構想が進められている。

 

 軍隊は、国防軍としての側面が強いが、冷戦時代にアメリカナイズされた防衛型の海空軍が発達している。

 冷戦時代の最盛期と、21世紀初頭の大陸の脅威増大で核兵器保有の声が日本国内で高まるが、アメリカ、イギリスが共に許さず。

 日本国内にはアメリカ軍の核兵器が公式発表上でも存在し、21世紀初頭でもアメリカの核の傘の下にある。

 

 また、独立からしばらくは英連邦軍の一翼として、その後ベトナム戦争ぐらいからは日本単独で海外派兵するようになり、英領時代の日本兵の評価もあって軍事的評価は高い。

 また70年代半ば以後は、日本経済と国力の増大に合わせて急速に軍の近代化と軍備拡張が進んだ。

 

 軍備そのものは、独立時点からかなりの規模を有していた。

 これは「英日軍」の多くがそのまま「日本軍」となったため。

 

 イギリスの影響で、最初から陸海空の三軍を持っているが、小規模な海兵隊は海軍の指揮下にある。

 三軍の中では海軍と空軍が重視され、アメリカやイギリスから多数の兵器を導入している。

 アメリカやイギリスの中古空母保有国としても知られ、常時2〜3隻程度の中型空母を保有している。

 現在は、国産の中型空母兼強襲揚陸艦2隻の整備を中心とした大規模な計画が進んでいる。

 

 国防費は常にGDP3%程度で維持されており、冷戦時代はともかく80年代以後の発展した国である事を考えれば、やや多めである。

 

 21世紀初頭の国防費は平均して約520億ドル。

 GDPの増大に比例して、年々国防費も増額している。

 

 また最近では独自の宇宙開発にも強い興味と努力を傾けており、毎年10億ドル近くの予算を傾注して、自力でのロケット打ち上げも達成した。

 ただし技術面など様々な分野でアメリカに依存しているのが現状となっている。

 



琉球王国:

 沖縄本島から小琉球島(フォルモサ=台湾島)にかけての島々を領有。

 

 1870年にイギリスの保護国となって以後、基本的に遅れた島国として過ごす。

 

 沖縄本島を中心に小琉球に続々と移民して、現地先住民と混ざり合う。

 またイギリス圏への移民もかなりの数に上る。

 国民の多くは、アジア系と言うよりは太平洋系の民族構成となっている。

 小琉球には日本からの移民もかなりの数に上る。

 また日本への移民も多数出ており、現在でも移民と相互交流が活発である。

 

 その後、小琉球への大量の不法移民もあって中華系の影響が強まるが、独立後に国を挙げて不法移民排除と国内での同化政策を強めることで「中華」となる事を避けた。

 国家としては、英連邦としてイギリスと日本やオセアニア地域を含む太平洋諸国とのつながりを求め続けている。

 中華の影響を排除するのが、伝統的国内政策となっている。

 このため中華人民共和国や華僑の多い国との関係は思わしくない。

 しかも中華側が、琉球を中華の一部と発言することが多いので、反発が弱まる事がない。

 

 1962年に、イギリスから独立。

 イギリスを範にした立憲君主制として成立する。

 

 1980年代中頃から日本に影響される形で経済発展が始まり、新興国として相応に注目されている。

 琉球諸島は近隣からの観光地としても発達しており、日本やV. ファー、最近では北亜やロシアからも多数が訪れている。

 

 総人口は、21世紀初頭で1900万人程度。

 ほとんどが小琉球島に居住する。

 

 公用語は、日本語とよく似た琉球語。

 必然的に、民間レベルでは日本やV.ファーとの交流が盛んである。

 ただし漢字以外で独自の文字を持たないため、主にラテン文字が使われている。

 漢字とラテン文字を混ぜて使う場合もある。

 近年は、同じ表音文字の日本語を見本にした民族文字を導入しようという動きが活発に行われている。

 また第二公用語として英語が指定され、知識階層や都市部では双方を話せるのが一般的。

 


V.ファー(ファー・ビクトリア):


 正式名称は「ファー・ビクトリア」。

 共和国などは付かない。

 旧蝦夷島の名前のファー・イースト・ビクトリア・アイランドがそのまま国名になった。

 

 英国王(女王)を名目君主とする、典型的な英連邦国家。

 議院内閣制の共和制国家で、内閣総理大臣(首相)が実質的な国家の代表となる。

 

 国自体は、北半球にあるニュージーランドもしくは大きなフォークランド諸島と表現すると分かりやすい。

 しかし冷戦時代はソ連と隣接しているため、独立初期はイギリス軍、その後アメリカ軍が陸軍師団を送り込むなど大軍が駐留した。

 「極東の楔」や「北太平洋の蓋」と呼ばれ、冷戦の最前線として注目された。

 独自の軍隊も出来うる限りの整備が心がけられ、英国軍同様の陸海空の三軍を持ち、規模は小さいながら精強が謳われている。

 徴兵制も長らく布かれていた。

 

 冷戦崩壊後はロシア(旧ソ連)との対立も消えて、ロシア極東と共にアジアでの白人勢力圏の飛び地として穏やかに過ごすようになる。

 

 建国以前から現在に至るまでアジアからの移民は強く制限しており、アジアからは日本からの移民を完全帰化など厳しい条件を設けた上で選抜的に受け入れるのみ。

 世界中から白人移民を求めるも、遠すぎてあまり増えず。

 1970年代以後になると、北米大陸からの白人移民が増えつつある。

 同じ英連邦のオーストラリア、ニュージーランド、そしてカナダとの関係が強い。

 

 しかし国内での人種差別は、移民制限に対して逆にあまり激しくはない。

 白人と日本人の混血もある程度の比率で存在する。

 

 総人口は、21世紀初頭で約400万人。

 

 国土はファー・ビクトリア島、サハリン島、クリル諸島を中心に約16万平方キロを有しているため、人口密度は低い。

 首都はファー・ビクトリア島中南部のニュー・エドワード市で、人口は80万人ほど。

 国全体で都市人口比率は高い。

 主要な場所の地名はイギリス植民地風だが、全体としては現地アイヌの言葉が圧倒的に多い。

 

 独立当初の主産業は農業と漁業で、今も酪農と混合農業が盛んに行われている。

 農業生産力の低い日本とのつながりが強く、食料品の多くが日本に輸出されている。

 地下資源も、ファー・ビクトリア島、サハリン島双方である程度の石炭が、サハリン島では石油と天然ガスが掘られ、国内余剰分のほとんどが日本に輸出されている。

 主要な食料資源、燃料資源は完全に自給されているため、東の小さなカナダと言われることもある。

 

 また英国統治時代から工業が進んでいた事もあって、1970年代ぐらいからは先端工業や精密機械工業が重視される。

 

 一人当たりGDPは北東アジアで最も高い数字を示し、北東アジアで唯一の先進国に含められる。

 工業技術の高さから極東のフィンランドと言われることもある。

 

 また近年では日本からの観光も多くなり、出稼ぎ労働以外での相互交流も進んでいる。

 加えて、ロシア極東との経済や民間交流も盛んとなっている。

 

 公用語は英語のみ。

 地方の一部では日本語も若干使われ、名詞のかなりが取り入れられている。

 先住民族であるアイヌ人のアイヌ語とアイヌ文化の保存運動も、1970年代から盛んに行われている。

 

 住民それぞれ約1割がアイヌ系と日系、そして白人とそれぞれの混血で構成されている。

 残り全てがイギリス系で、一部に冷戦崩壊後に増えたロシア人が住む。

 白人(主にアングロ系)人口は、300万人を少し超える程度。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 各都市や島の名前が現実にないながらも現実味を帯びていて面白いです‼ [一言] 是非国旗も投稿してください‼
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