地の底の少女
いつからか
そうなってしまった。
かれこれ
ずっと前から
そうだったけれど
全く誰も知らない。
いつの間にか
穴に落ちて
崖から転げて
真っ暗になって
なくなってしまったことを。
明るい場所で
みんなと一緒だと
みんなは思っている
けれど
本当は全く見えていなかった。
ある三日月の晩に
欠けた月に
見上げた空に
重ね合わせた
一筋の涙
少女はもうずっと
崖の下でもがいている。
のぼって みんなと同じ場所に
戻ろうとして 長い時が経った
けれど 全く位置は変わっていない。
今も少女は崖の底
見上げた空は 遠くて小さい
かすかな三日月
届かぬ光
少女は何百回も泣いた
けれど
地の底が潤うことはなかった。
今日も見上げる 晴れの夜
雨は降らずに 乾いたまま
崖をのぼるも 落ちていく
乾いているのに 滑る夜
24時間365日
いつもいつも 見上げてる。
みんなは もうずっともう
遠くにいったのだろうか
少女の目には うつらぬ背中
背中の影を
追うために
今日もひとりで へばりつく。
ゼロになるため
のぼる夜。
ゼロに戻るため
もがく朝。
いつの間にか
ゼロに戻るのが
夢になってしまった。
やがてやがて また過ぎて
なんども巡る 季節も飽きて
大人になっても
地の底に
届かぬ光 見上げてる。