第8話:男の小さなプライド
この話は、佑川芭瑠堵が執筆しました。
ちょっと最後のほうが雑ですが、後で訂正します。
少し妥協してお読みください。
まったく…邪魔しやがって……あんの妖精がッ!
「いいじゃーん、ちゃんと食ったしぃ~♪」
「テメーはもぅ黙れッ!!」
まったく……これじゃ話しが続かなねぇよ。
「あ、チィちゃん……馬鹿のせいで切れたけど
続きどうぞッ」
「え、あ、はい……」
やっと、話しが元に戻せた……か?
ま、いいや、とりあえず。
「……でも、私、何も出来なくて
皆に迷惑ばっかり……」
「チィちゃん……」
チィちゃんの大きな瞳から、大粒の雫がこぼれた。
俺は女の子が泣いてたら……
どうすれば良いかなんて分からない。
けれど……これだけは分かる。
俺も同じ事を、心の奥で……思ったことがあるから………。
チィちゃんの気持ちが……少し分かるような気がした。
「チィちゃん……そんなに思いつめること無いよ!
誰だって、得意不得意があるし
出来ないことがあったって、かまわないんだよ?」
「ごめんなさ……私、つい感情が高まっちゃって……あはは」
「んでさ、無理に笑おうとするなよ」
「……え………?」
「泣きたい時は泣けばいいんだ
俺だって、なさけねーけどさっ……泣くし
はは、女々しいだろ?」
「そ、そんなこと……!」
「じゃぁ、チィが泣いちゃぁー駄目ってことねぇだろ?」
「でも、迷惑……」
「かけていいって……気にすんな!なっ??」
俺は思いっきり笑って見せた。
チィちゃんの泣きそうな顔見たら、不覚にも自分が釣られて泣きそうになった。
け、けど……ここで泣いたらなぁー………格好がつかねぇし。
「それに、俺だけじゃねー……
ま、頼りないかもしれんが……ケルだって
……えと、さとぅーも居るしな……」
「もーなんで、私のところだけ渋るの~凡人さぁん!」
「うっせ、静かに寝てやがれ!!」
ブベシャ!!!
さとぅーを土に埋めてから、話しを続けた。
「せめてさ!
会ったばっかりだし、変な奴らだろうけど
俺たちを信用してくれな?」
「あ、ありがとう……」
涙はまだ、止まらなかったけど。
チィちゃんは、さっきとは違った
本物の笑みを見せてくれた。
……す、すげー可愛い。
あ、いやいやいや!!
今はそんな、変なこと考えるな!俺!!!
「深紗斗ぉー」
「あ?なんだよ、ケル??」
「おらを見捨てねぇーでけろおおおおお!!!」
「うぉ!?
なに、いきなり泣き出すっっ
うわぁああ、くっつくな!鼻水つけるなぁああ」
いきなり、泣き出すしベタベタ以上にくっつくケルベルン。
ど、どうしたよー……。
「うぅ……何でもねーべぇ」
「そ、そうなら…良いが……?」
なんなんだよ。
「あ、悪いなぁ……
チィちゃんの事、話してたのに」
俺は悪いと思って、謝った。
「いえ……」
「まったく……こいつら、世話焼けるぜ」
「でも、深紗斗さん…嬉しそう」
「そ、そーか?」
ま、嫌じゃ……ねぇーわな、うん。
「あと、私の事……チィで良いですよ?」
「あ、あぁ、そ、そか……!!」
その対応はかなり嬉しいもんだが。
いやいや、しっかりしろ!深紗斗!!
これは、あれだ。
ちょっと好意を抱いてる友達的ポジションであって!!
俺は何に誤解を解いているのだか分からない。
「私も……深紗斗さんが、好きになってしまいました」
「え……」
いま、なんと……。
「私、深紗斗さんの事……」
「は、はぃぃ?!」
やべ、格好悪い……動揺しすぎて声が裏返った。
で、でも……この展開は……まさか、告白!?
い、いやいや、そんなまさか………でも……。
俺の胸はバクバク鼓動を打っていた。
これは、もしかしたら……小学校の演劇発表会で木役を演じていた時以来かもしれない!!
……今、え?ってなったやつは、それ以上考えるよなよ?
木の役だって、立派な端役だ。
俺は手に汗、背中に汗をかきながら
チィの返答を待った。
………が!!
「ぎしゃぁああああああああああ!!!!」
ドカァァーーン!!
凄まじい鳴き声らしきものと、地響きが轟いた。
何が起こった?!
良い所だったのにぃぃい!!
そんな場合じゃないってのは、分かってるけどさっっ
「いったい何が起きた?!」
「あの地響きは……またなの………もぅイヤ!」
「ど、どうしたのっチィ?」
「また、来たのよ……獣が」
「獣って……えぇ!?!?」
また、そういうのに出くわすのか!俺はぁああ!!
「どうしよう……また、もやし畑が荒らされちゃうっ!!!」
どうやら、獣はチィの畑の方に居るらしい。
チィは地響きの方へ駆け出そうとする。
「あ、危ないよっチィ!!」
「深紗斗さん、離してっ!!!」
俺はチィの腕をつかんで止めたら……そんなことを!
ちょっと俺……そんな事言われたら凹んじゃう。
いや、まて!今はそれど頃じゃないぞ、俺!!
「駄目だ、チィが行っても……」
「変わらないのは、分かってるわ!
でも……私の畑もあるの!!
私の居場所……」
「チィ……」
そうだ。
チィの唯一の居場所は、もやし畑なんだ。
力がないチィが、唯一みんなの主食を作れる場所。
それがやられてしまったら、チィは……。
「深紗斗さん、ごめんなさい!
許してくださいっっ」
「え?」
「はぁあああああ!!!」
「う、うぇぁああああ!?!?!?」
チィが俺の手を掴むと、一本背負いの勢いで数メートル先まですっとんだ。
えぇぇ!?ちょっと、チィって力が無いんじゃなかったっけ?!
だから、みんなの役に立てないとか、そういう風に……。
ギュシャァ……。
幸い、俺は土が軟らかい所へ投げられた。
チィの配慮かもしれないけど。
……痛い………な、泣きそう。
「もぉ~~深紗斗ったらぁーお・ド・ジ☆」
「うっせー黙りやがれぇええ」
くそーー。
凄く格好悪いじゃんか!ちくょー!!!
「深紗斗、平気だべか……?」
「へ、へーき……な訳、ねーじゃねぇか!
……お前みたいにMじゃねーから、痛みの免疫が出来てないっつうの!!」
「ははぁ~照れるべぇ♪♪」
「褒めてねぇーし!!
……ぐふっ………」
痛い……ちょっと(でも、数メートル)投げられただけで
もぅこんなにもボロボロ。
あぁ、女々しい俺に献杯……。
「しょーがないわねぇ~凡人さん☆」
「テメーにだけは、言われたくねーよ……クソ妖精」
「助けに行きたいんでしょ?」
「あったりめーだ!
……でも、俺には力が………」
悲しいことに全くもって無い。
自分で言ってて情けなくて泣けてくる……。
「……いや、でも!
チィを助けるくらい俺にだって!!」
無力で、チィより力がない俺だって!
何もしないで、チィが傷つくのを見ているだけだったら……
きっと……俺のプライド(少量)が廃る!!
「そうだと思ったわ☆
そんな、凡人深紗斗に……はいっコレ☆★」
「これは……あの魔法ステッキ?!
でも、使えないんじゃ……?」
「ちっちっち!
これだから、凡人ツカエーナイは♪
このさとぅー様が、いつまでも空っぽの
ツカエーナイ状態を継続するわけないでしょ?」
「もしかして、貯めた?」
「じゃすつぴんぽん♪♪」
「いつのまに……」
「まぁまぁ、いいじゃない☆
とにかく今の深紗斗には、必要でしょ?」
そう言って、俺の前にステッキを差し出す。
さとぅー…今回ばかりは、お礼を言うぜ!!
ま、口には出さないけど。
……言ったら、付け上がりそうだから。
「さぁ、深紗斗!
これに着替えるべ♪」
「これ…って!?
あの時の女装じゃねかよっっ」
「密かに貰っておいたべぇ!」
「今回、絶対着ないからな!!」
「着てくれよ~深紗斗ぉ……」
あぁっもぅ!
そんな犬っころの顔して懇願しても無駄だぞ!!
絶対、チィに見られたくねぇよ……。
いやいや、見られてなくても着たくはない。
「でも、深紗斗☆」
「なんだよ、早く行きたいんだから手短になっ」
「お決まりだから
その女装か、もしくは……それに相当しない服じゃないと
神法は発動しないよ?」
「な、なんだとぉぉおお?!」
すっげー使えないじゃねーかよ!!!
「ほら!魔法陣的な?もんだからさ☆」
「チクショー!!
着てやるよ!あぁ、着てやるさ!!!!」
それでチィが助けられるなら……。
俺は何だってやってやるともさぁああ!!
ぱっぽー♪
……着替え終わりました。
「やっぱ、深紗斗は似合うべぇ~~」
「うん、なかなかよね☆★」
「黙れ!!
さっさと、魔物倒しに行くぞっっ」
* * * * *
「やめて、魔物!!」
「ぎしゃぁぁ?!」
「こ、怖くないんだからっ……
ふっ……私の畑を荒らすなぁあ!!」
「ぎゃぁああああああ!?!?!?」
その場所にたどり着いた。
が、良いが……かなりの悪状況。
まさに、チィが魔物に襲われんとされているところだ。
「チィ!危ない!!」
昔の俺だったら、怖くて助けにすら飛び込めなかっただろう。
だけど、今の俺は自然と足が動いてた。
「?!
み、深紗斗さんっ!」
「だ、大丈夫か……チィ」
チィを魔物の攻撃から守れることが出来た。
火事場の馬鹿力ってやつか?
助けに行くのに必死だったからだろうか?
何だか分からないけど、とりあえず、格好良く助けられ……。
「いてぇ!?」
「深紗斗さん!だ、大丈夫ですか?!!」
そう人生、上手く行くはずがない。
チィは守れたものの、俺自身は守れてなかった……。
「深紗斗、20のダメージ!!」
「さとぅー!一々、ダメージ解説を入れるなぁ!!
俺はポケモソじゃねぇっつうの……」
色々疲れた。
しかし、ここで心を追っている場合じゃない。
「手当てしないと……っっ」
「大丈夫だよ、チィ
これくらい!」
若干強がりが入っているが、気にしない方向で。
俺は魔物に向かって、叫んだ。
「俺が相手だ!
このやろぉぉおおおおおおおおおお!!!!」
あぁ、俺の死亡フラグが
たった今、もしかしたら立ったかもしれない。
しかし俺の中にある
ちっさな、ちぃーっさなプライドさんが許してくれない。
ここは……格好良く、チィを守って見せろ!……と。
ざしきへ~
お前に回すぞーがんばれww