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第7話:地界の主食は…

担当:ざしきわらし


「深沙斗さん、ごゆっくり召し上がってくださいね」


 まるで蛍のような小さな明かりの元、チィはそう言って俺の前に何枚か岩の皿を置いた。

 うん。荒削りでとても皿とは言えないけど、こういう場に来るとなんとなく趣がある。

 俺たちはあの後、チイの家に招かれていた。

 本当はこの地底界のエネルギーとやらを見学するはずだったんだけど、どこかの馬鹿妖精が『お腹減ったぁあ』なんて言い出すからよぉ……。

 それでチィが家に招いて俺たちに料理を持て成している訳だ。

 まぁ嬉しくないと言ったら嘘になるけど、そういうワガママは勘弁して欲しいぜ。


「……凡人さん」


 おっと噂をしたらなんとやら。

 さとぅーが俺の隣にふわりと降りてきて、きゅっと袖を掴む。


「何だよ」


 なんとなく気持ちわりぃな。


「私ね、凡人さんなら真っ先にこの料理を見てツッコむと信じてたの」


「んで?」


「ボケ担当の私にはツッコミは不可能です」


「んで?」


「不可能です」


「んで?」


「ふ・か・の・う・で・す!」


「“汝の辞書に不可能の文字はない”」


「――――ハッ!」


 いきなり悟ったような顔をするな。

 そして、俺も何か言っちゃってるし。

 まぁ、流石に俺もこの料理(?)を見た時はビビッたけどさ……。

 でも好きな女の子を傷つけるようなツッコミはしたくないのが俺の心境。

 てな訳で何かを悟ったさとぅー、俺の変わりに解説ツッコミお願いします。


「ねぇチィ」


「何でしょうかさとぅーさん」


 いきなり本人直撃かよッ。


「私はふわふわとろとろのオムレツが大好きなの」


 知ったこっちゃねぇよ。


「でも貴方の料理はシャキシャキシャキーンと真逆ね」


 まぁ当たってるけど、そんな擬音でじゃ解説にならねぇ。


「は、はぁ……それがなにか?」


「…………」


「…………」


「お前の人生、シャキシャキした借金人生かッッ!!」


 意味わかんねぇツッコミすんなぁぁぁ!




 △ ▼ △



 全く何なんだあの馬鹿妖精は。

 訳の分からないツッコミに加えて、チィの頭をペシコッと叩きやがった。

 おまけに暴言は吐くし。

 当然の如く、奴には罰としてチィの大量に作ってもらった料理を完食の刑を下した。

 言いだしっぺのクセに、『食べたくない』なんて言い出すから悪いんだ。


「さとぅー……大丈夫だべか」


「ほっとけ。コレに懲りて少しはまじめになる事を願おうぜ」


 俺の足元を歩くケルは、微かに耳を下げる。

 良いんだよ。逆にいつも俺に悪さばっかしてんだからコレぐらいの罰はあった方が良い。

 てな訳で俺とケルとチィだけでエネルギーを見に行く事となった。


「……やっぱり私の料理はまずかったでしょうか」


 しかしながら、チィは俯き加減に俺の隣を歩いている。


「んな事ないって! あの妖精が言った事は気にしなくていいからさッ」


 あぁ。必死に慰める俺ってめっちゃ惨めだ。

 なんかこういうときってどうして上っ面な言葉に聞こえちまうんだろ。


「奴もちょっとびっくりしただけなんだよッ地底界と地上の食文化の違いつうか……」


 俺は覚悟を決めて、あの食材へと話題を振る。


「もしかして地底界は“もやし”が主食なのか?」


 がぁぁあ。とうとう聞いちまったッ!

 好奇心には勝てなかったぁぁぁ。

 だって気になるじゃんッ。だってあの皿に出てきたのみんなもやしだよ?

 もやしの御浸しに、もやし炒め、もやしのスープ、もやしのサラダ、もやしのシャーベット……びっくりするじゃんか普通!

 でもここまで俺は何も聞かずに耐えてきた。すぐにツッコミを走らせてしまうこの俺が、だ。

 誰か褒めてくれ。この俺を褒めてくれぇッ。


「はい。地底界はなんせ太陽の光がありませんので、たとえマグマエネルギーで光を作っても植物が育たないのです」


 ……なるほどな。

 確かに懐中電灯のような弱々しい明かりのみで、植物が育つとは考えにくい。

 だから逆にもやしの栽培が発展したのかもしれないな。

 地底界もエネルギーがあるからといって、何かかしら欠落しているものがあるんだな。


「深沙斗さんは地上から来たんですよね」


「ま、まあ」


 実際は異世界から拉致られてきました。


「地上の方は何を召し上がって暮らされているのですか」


「えっ……俺なんかは普通に米食ってたけど。おいケル、この世界の住民って基本何食べるんだ?」


 拉致られたばかりの俺には、この世界の暮らしなんて分からん。

 この間言った村は普通に米とかが主食っぽいけど、間違ってたら嫌だしな。

 ここはケルに聞くのが一番だ。


「それは種族によって違うだべ。まぁオラの知る限り、地上の人間は米や麦を良く食べてる気もするような……」


「ふぅん」


「まぁオラは、ロウソクと鞭があればご飯三杯はいけるべぇッ」


「んな事を女の子の目の前で言うなぁッ」


 チィがそんな事に興味を持ったらどうする気だドM犬。

 でもそんなチィも可愛いかもしれない――って何考えてんだ俺は!

 すると隣でチィがくすくすと笑い出す。

 何か面白い元素でもあっただろうか……。


「ふふっ。深沙斗さん達はホントに仲が良くて羨ましい」


「良くは無いよ。ただこいつらのテンポに合わせてるだけっつうか」


「意地っぱり深沙斗も大好きだ……べぶしッ」


 ケルが何か言う前に、俺の鉄拳が奴の顔面に食い込んだ。

 あの痛がりようだと暫く無言だろう。


「み、深沙斗の愛の鞭がぁぁあ……ぐふふふ」


 ……何も聞かなかった事にしようか。

 するとチィは笑いながら、話を続けだした。


「でも深沙斗さんは皆から頼られてるじゃないですか。さとぅーさんも、そんな深沙斗さんが大好きなんですよ」


「そんな事は無いよ。俺って影薄いしさ……アイツが俺に頼ってる理由だって“一週間いなくても誰も困らない”からっていう呆れた理由つうか」


「そんな事言ったら私だって……」


 チィは急に立ち止まり、俺の手を握ってきた。

 思わず声を上げそうになるけど、なんとか堪える。

 だってチィの小さくて冷たい手は、少し震えていた。

 まるで何かの闇に怯えるかのように。


「私は力もあまりないし……皆みたいに地底を補強したり開拓することが出来ない。もやし栽培しか出来なくて、だから私みたいな女は――」


「ち、チィはすんごい頑張ってるよッ」


 思わず俺の言葉にも力が入った。


「まぁ私も認めてあげるわ!」


 って、何でここにさとぅーが居るんだよッ

 何でそんなに上目線なんだよッ

 もやし料理食い終わったのかよッ!


「深紗斗の言葉に、チィの反応は――次話に続く!」


 勝手に話し切り上げやがったー!?


ざしきわらし担当が忙しいという都合により

ちょっと中途半端な気がしますが……この話しはここまで!!


次回はそういう関係上、長くなります

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