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第1話:自称・妖精さん

この1話を担当したのはざしきのわらしです。

 初めまして、俺は佑川深紗斗すけがわみさと。清城高等学校一年だ。

 いきなりで悪いが、俺の大嫌いな物ベスト3を教えてやろう。

 第三位。“意味不明なモノ”

 第二位。“うるさいモノ”


 そして、第一位。

 俺の直感的な判断になってしまうが――。


 “俺に害があるモノ”だ。

 この三つは誰でも嫌いだと思う。

 まぁ、賑やかな方が好きとか、天然っぽいとか言う奴は残念ながら俺と友達になれない。

 何。ならなくて結構だって?

 上等じゃねえか。後で泣きついて来ても仲間に入れてやんねぇかんなッ。

 ……って、そんな話をしたいんじゃない。

 つまり俺は平和主義者なんだよ。

 そういうのと関わりそうな時は、直ぐに現実逃避。又は脳内削除。

 力付くで解決は絶対しない。だって俺、暴力反対だから。

 だから俺は、“今回”も脳内削除か現実逃避しようとした。

 しようとしたけど――……頭が完全にフリーズしてしまったんだ。


『はぁいッ浮かない凡人さん』


 “コイツ”のせいで。

 そんな事を知らないチビ女は、ニコニコと片手を振って来る。

 ただのチビ女なら、俺も動じない。

 だが、そいつは俺の人差し指程の長さしか身長が無いのだ。

 しかも背中に四枚の透明な羽。


『私は妖精のサトゥ。以後よろしくぅ』


 勝手に自己紹介しだしたよコイツ。

 なるほど。妖精だからこんなチビだし、羽生えてんのか。

 妖精って本当にいるんだな。

 お兄さんの頭はようやく稼動し始めたよ。


……。


…………。


………………。



 って、納得するかボケェッッ!




 △ ▼ △




――約十分前――


「あぁあぁ……ウゼェ」


 微かに赤くなり始めた帰宅路を歩きながら、俺は前方を睨み付ける。

 前方にはぎゃあぎゃあと騒ぐ、同じ高校の女子三人組だ。

 今日は課題で居残りさせられたせいで、ウザイ女子達と帰宅が被ってしまった。

 これだから嫌なんだ。

 俺は静かな日常を好む。よってコイツらみたいな騒ぐ奴らとは、気が合わない。

 まぁそれは、コイツらだけに言える事じゃないけど。


「なぁッ。今からみんなでカラオケ行かねぇ」


「えぇ、やだよ。お婆ちゃんが家で待ってるもん」


「私もお兄様が……」


 別に聞くつもりは無いが、声がデカいから自然に耳に入って来てしまう。

 そうだ。騒ぎたいならカラオケにでも行け。

 静寂を愛する俺の邪魔をするな。

 すると、提案した女――見るからにヤンキーだな。そいつが、頬をフグのように膨らませる。


「良いじゃねぇかよ。神楽も“お兄様お兄様”って言ってたら良い大人になれねぇぞ」


 お前が言うな。ヤンキー女。


「そうだけど……」


「アヤメも、婆ちゃんなんてほっとけ。きっと天国であたしらの熱唱を見守ってくれるよ」


「私のお婆ちゃん生きてますけどッッ!」


 友達の祖母を勝手に殺すなぁッ。


「細かい事気にすんなよ。でも、あたしの死神ダチがお前の婆ちゃんの事言ってんだ。“もう後は無いっシニシニ”ってね」


 死神が友達って、お前誰だよッ。

 てか、死神の語尾がキモい。なんだよ“シニシニ”って。笑ってんのか。

 ヤバい。完全に俺の静かな日常が崩れている。

 だいたい他人の話を盗み聞きして、ツッコミ入れるなんて達が悪い。

 よし。遠回りになるが、裏道で帰ろう。

 俺のキャラが崩れる前に、肯定してしまう前に。

 俺はキッと馬鹿三人組の背中を睨み付け、手前の曲がり角に入る。

 この道は街頭が少ないし、隣が雑木林だから凄く不気味だ。

 カラスが目を光らせ、がーがーと鳴き声を漏らす。

 覚悟はしていたけど、怖いもんは怖い。

 思わずゴクリとと唾を呑む。

 たくッ。あいつらのせいだ。

 まだ腹の虫がおさまらないが、今日の所は脳内削除だけで勘弁してやる。

 断じて復讐が怖い訳ではない。あくまで平和主義なだけさ。

 だいたいあんな奴らの記憶が頭に入ってたんじゃ、入らない頭が余計入らないじゃないか。

 俺はそういうのに振り回されるのが気にくわないだけだ。


「……クソがッ」


 俺は何となくムシャクシャして、足元に転がってた石ころを蹴っ飛ばした。


――こん、こん、こぉん。


 まるでウサギのように地面を跳ねながら、転がる小石。

 小石は暗闇に吸い込まれ、音を立てながら雑木林に入ってしまう。

 別に悔やむような物でもないので、俺は舌打ちを残してその場を去ろうとした。

 しかし――……。


――こぉん。こん。


「はぁ?」


 雑木林から、俺の足元に返って来る石。

 石はスニーカーに当たって、再び立ち止まった。

 俺の目線は、雑木林へと移る。

 雑木林の奥は闇で見えないが、人の気配は全くない。

 なんで戻って来たんだ。

 まさかスーパーボールじゃないよな。俺は思わず石を拾い上げ、地面に落とす。

 まっ。当然バウンドしないな。


「…………」


 じゃあ、なんで戻って来たんだ。

 背筋を這い上がる悪寒という名の百足。

 呆然とする俺の長髪を、春の風がさらって行く。


『もうッ。物に当たっちゃダメだよ』


 突然、辺りに響いた声に俺の身体が跳ね上がった。

 これは、幼い少女の声?。

 振り返るが、その姿を見つける事が出来ない。


『でも“見つけた”』


 俺の足元が、ぱぁッと輝き出す。

 否――雑木林の根元で輝く何かが、俺の足元まで照らしているんだ。

 今、走り出せば逃げられる。

 なのに、身体が恐怖と興味で動いてくれない。

 光の根源になっているのは、蕾が異様に大きい花だった。

 俺という観客を前に、蕾は次第に開いて行く。

 人間にはとってものろく感じるが、実際は植物の観察ビデオを早送りを見ているようだ。

 光は大きくなり、俺の顔を真っ白に照らしていく。

 花が完全に開いた時、何かが飛び出した。

 リアクションする暇も無く、“そいつ”は俺の目と鼻先に現れた。


『はぁいこんにちはッ浮かない凡人さん』


 一瞬、虫かと思った。

 透明な四枚の羽を羽ばたかせ、俺の目の前に浮いている。

 だが、顔や胴体は人間だった。

 栗色のおかっぱ頭を揺らしながら、片手を上げてニコニコ微笑んでいる。


『私は妖精のサトゥ。以後よろしくねぇ』


 “妖精”?

 俺の顔が引きつる中、サトゥと名乗る自称・妖精がヒラヒラと宙に踊る。

 分からない。けど、俺の本能は言っている。

 コイツに関わっちゃいけねぇって。

 その瞬間、俺の脳のフリーズが解けた。


『私、ずっとあなたみたいな人探して――・・・・・・』


「あっやべ。夕方のドラマ再放送始まってるよ」


 俺はポンと手を叩き、回れ右をする。

 俺の必殺技、現実逃避だ。

 しかし、俺の足はなかなか一歩を踏み込めない。

 てか、ワイシャツが引っ張られてるしッッ。


『待て待て待てッ。ちょっと逃げないでよ!』


「ぐぇ……く、苦しい。離せよ虫チビ」


『虫チビとは何よッ。私にとっちゃ、あんたはラ○ュタの巨人兵と同類なんだから』


 うわぁ。まさかのジ○リネタ来たー。

 てか俺、現実逃避してたのに普通に話しちゃったよ。

 妖精は、すっとワイシャツから手を離すと、また俺の目の前に浮く。


『アナタは選ばれたのッ』


「だ、誰に」


妖精達わたしたちにッ』


「何にだよ」


『一週間居なくても気付かれない凡人ベスト一位に!』


「嬉しかねぇよッ」


 全くもって不名誉じゃないか。

 てか、何で今あったばかりの虫にそんな事言われなきゃいけないんだよ。

 俺の存在感の無さって、そんなに有名なのか。


『ぇえッでも物事は前向きに考えなきゃ。“コレ”はアナタが道でコケても、プールで溺れても、遠足のバスで乗って居なくても気づかれない程の存在感の無さを攻略する、千載一遇のチャンスなんだよ』


「俺の存在感馬鹿にしすぎだろう!」


 でもまるっきり嘘とは言えねえけどさ。バスの話とか。

 それにしても、コイツは話の主語が無いから凄く怖い。

 何が千載一遇のチャンスなんだ。

 するとサトゥが出てきた花が、再び輝きだした。

 さっきよりも強く、激しく、俺たちを光で包み込んでいく。

 あまりのまぶしさに、俺は手で目を覆った。


「――――ッ」


 指の隙間からサトゥを睨み付ける。明らかに虚勢だったけど。

 でもアイツは、無常にもそれを見透かしたように俺の目の前でにっこりを笑った。


『これは、私にとっても大切なチャンスなの』


 そういうサトゥの目は、とても悲しげで。


『“異界の戦争”を止める為にね』


「異界の戦争ってお前――うわぁぁあッ」


 今までアスファルトに立っていたはずなのに、足場がすっと消えてしまった。

 どこまで続くかも分からない穴の中を、俺は光と共に落ちていく。

 下がどうなっているのかは分からないけど、固い所に落ちればただではすまない。

 同時に覚悟するは、死。

 ・・・・・・なんなんだよッ。なんで俺がこんな目に合うんだ。

 神様はなんで、俺には冷たいんだよッッ。


 あの生物が、俺の耳元で何か囁く。

 でも頭は理解しなかった。

 こうして、俺の運命は狂っていく。

 良い意味でも、悪い意味でも――・・・・・・。



 


 


 


相方のMへ。


遅くなってすまん《汗

続きをよろしくぅ


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