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4話

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「ふぁ……すごく広い」


 足を伸ばすどころか、全身を沈められそうなほどに広い湯舟にゆったりと浸かってぼんやりとする。

 とりあえず贅沢すぎるのだ。


「はぁ、上がろう」


 明日も早いのだからやることをさっさと済ませないと。




「本当にすまない!」

「いえ、別に問題ありませんよ。ここは僕が片付けておくので先にお風呂どうぞ」

「いや、だが……」

「濡れてますし、風邪をひいても大変です。それに明日は仕事なんですよね? 気にせずにお風呂に入ってきてください」

「あぁ……」


 お風呂から上がればなぜかキッチンのあちこちに水が飛び散り、お皿の破片が転がっていた。

 そして、その場でオロオロとする獅子野さん。


 状況はカオスでどうしてそんなことになったのか……それを聞く前にとりあえず破片が怖いので獅子野さんをその場から離して、濡れていたためタオルを持ってきて渡した。

 どうしてこんなことになったかといえば、昼間は僕が洗い物をしたから代わりに洗い物をしておこうとしたらしい……。

 ありがたいが、これでは余計な仕事が増えただけのような気がする。


 片付けも手伝ってもらうよりは濡れてしまっているのだし、先にお風呂を薦めた。

 渚姉さんが獅子野さんが生活力皆無と言っていたが、先が不安になってくる。


「つっ!」


 考え事をしながら破片を回収していたからか指を切ってしまう。


「はぁ、あ、洗濯物の相談してなかった……」


 切った指を口に含みため息を吐く。

 ある意味で姉たちと付き合う苦労と変わらないのかもしれない。


 指に絆創膏を貼って、作業を再開する。

 大きな破片は片付いたので次は布きんで飛び散った水と細かい破片を集めていく。


「すまない、急いだんだがだいぶ片付いてしまっているな」

「もう上がって……っ!? な、なんて格好してるんですか! 下! ズボンか何か履いてきてください!」


 まだ10分程度しか経っていないのに声を掛けられ驚いて振り返れば、下着にTシャツといういで立ち。

 2番目の姉である(かなう)姉さんも風呂上りはよくそんな恰好で歩き回るが、さすがにあまり知らない異性の前でそこまではしないだろう。


「あ、す、すまない! すぐに履いてくる!」

「び、びっくりした……」


 あぁ、もう本当にびっくりした……きっと僕の顔はかなり真っ赤になっているだろう。

 いくら何でも警戒心が足りなさすぎると思う。


「ふぅ、すまなかった」

「いえ……その、髪を乾かしててください。あとは掃除機をかけるだけなので」

「いや、うーん。うん。そうだな……ん、その指、怪我したのか?」

「あぁ、これは僕の不注意で──」


 指の絆創膏が見えたのだろう、不意に自分でも確認しようと上げた手が取られる。


「私は、迷惑をかけてばかりだな……何か私が君に返せることはないだろうか?」

「え……あ、その……」


 お風呂上がりの上気した美人といえるような顔を近づけられて、言葉に詰まる。

 いくら姉3人に囲まれて育って女性に耐性があるとはいえ、やはり赤の他人というのは違うものだ。


「何でも言ってくれ」

「な、何でも」


 何でも? なんでも?


「て、手を放してください」

「すまない。痛かったか?」

「い、いえ。その、あ、謝ってばかりですからそれをやめましょう! そう、それがいいです!」


 僕は何を言っているんだろうか?

 もう、恥ずかしすぎて何を言っているのかよくわからない。


「……あぁ、気を付ける。ありがとう」

「……っ! は、はい」


 キョトンとした後に、そんなに華の咲くような笑顔はずるいと思う。

 あぁ、もう。

 まともに顔が見られない。



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