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ブレイド&ブレイド~ARの刃、鮮やかに舞う~  作者: 宇奈木 ユラ
第二章 拡張現実は、鮮烈に
6/28

2-1

祝、日間アクションランキング7位!


「なぁ、孝弘」


「なんだ?」


「eスポーツって興味ある?」


 金城からの誘いを断った翌日。

 一心は、購買部で購入した焼きそばパンをかじりながら、ぼんやりと孝弘にそんな質問をした。


「どうした、ゲーム実況にでも興味がわいたのか?」


「まぁ、そんなところかな」


 そういいながら、一心が思い出すのは昨日の新宮の姿だ。

 鮮烈に瞼に焼き付いたその雄姿は、控えめにいって一心の興味をすごく誘った。

 やってみたい、とも少し思った。

 ――だが、そうはいかない事情というのが、一心にはあった。

 他人から見たら些細なことかもしれない、だが一心にとっては挑戦をためらわせるだけの事情が。


「なんにせよ、一心が何か――」


「――志村くん、ちょっといいかしら」


 何かを言いかけた孝弘が、そのまま固まる。

 というか、一瞬教室内の時間が止まった。

 孝弘の方を向いていた一心が、まさかと思って振り返ると、そこにはあの“七崎のラスボス”こと新宮遥が立っていた。

 彼女が、自発的に誰かに話しかけるなんて、珍しいところではない。

 一心の記憶が正しければ、初めてではなかろうか?


「昨日のことで、少しお話があるのだけれど――ここじゃ人目が多いわね。場所を変えましょう」


 そういって彼女は、焼きそばパンを持つ一心の腕をつかむと、ぐいっと強引に引っ張った。


「え、ちょ!?」


「須崎くん、彼を借りるわ」


「ど、どうぞ」


 予想外の力強さで引きずられていく一心を、孝弘を含めたクラスメイトが啞然とした表情で見つめていった。



▽▲▽



「志村くん、強引に連れ出してしまって申し訳ないわ」


「あ、強引って自覚はあるのね」


 校舎裏、それこそ不良がカツアゲに利用しそうな学校の死角に連れてこられた一心。

 新宮の眼力を前に若干緊張をしながら、一心は口を開く。


「それで、話ってのは」


「貴方に、クラブに入ってほしい」


 率直に、かつ端的に新宮はそういって再度一心を勧誘した。

 内心、そんな予感はしていた一心は、小さくため息を吐く。


「俺には、無理だ」


 だからこそ、この場でもう一度はっきりと彼は拒絶の意を示した。

 しかしながら、新宮の視線は和らぐことなくまっすぐに一心を射抜く。


「嫌じゃなくて、無理なのね。じゃあ、その理由を教えてくれる?」



「え!?」


「話して。その“無理”は、私が何とかできるモノかもしれないから」


 新宮の物言いに、若干一心は頭にきた。

 その理由を言いたくなかったのもあるが、なにより高慢さを感じてしまったのだ。


「なんだよ、どうしてそこまで俺にこだわるんだよ」


「それは――」


 新宮も何かを言いかけて、口ごもってしまった。

 気まずい沈黙が二人の間を流れる。

 その沈黙のなかで、一心は少し強く言い過ぎたかと後悔した。

 謝ろう、そう思って口を開いたその時だった。


「ごめんなさい、ちょっと無神経に言いすぎたわ」


 先に謝罪したのは、新宮の方だった。


「私の事情を無理やり貴方に押し付けるようなことを言ってしまって、申し訳ないわ」


「新宮の、事情?」


「――私、部活を作りたいの、校外クラブじゃなくて」


 新宮は、少し所在なさげにそう言った。


「けど、その、あまり人と接するのが得意ではなくて、それで上手くいかなくて」


「――そんな時、俺が活動を目撃して、誘いやすい口実ができた、と」


 無言で俯き、うなずく新宮。

 それを見て、思わず天を仰ぐ一心。

 まさか、“七崎のラスボス”にこんな一面があったとは。


 ――不覚にも、ちょっと助けてあげたいだなんて思ってしまうとは。


 そう思って、一心は自分のその善人性をちょっと恨めしく思った。


「その、よければ一回だけでもいいの。体験して、それで気に入ってもらったら入って欲しいのだけれども」


「――わかった、仮入部して良かったら入ってもいい」


「よかった」


 次の瞬間、バシッと一心の両手が新宮に握りしめられる。

 一心の顔の、すぐ至近距離に恐ろしく整った新宮の顔が迫る。

 その瞳は輝き、頬は僅かに紅潮していた――表情の変化こそ乏しかったが、とてもうれしそうなのは一心にも分かった。


「早速、今日の19時にグラウンドに来れる? 大丈夫、絶対後悔させないわ」


「お、おう」


 一心の返事を聞くと、新宮はさっと離れた。


「それじゃあ、待ってるわ」


 そういうと、彼女は一心に背を向けて、すたすたと去っていった。

 その足取りは、心なしか軽そうではあった。


「――。」


 新宮が完全に去ったことを確認した一心は、思わず地面にしゃがみ込み、両手で顔を覆う。


「ちょろすぎんだろ、俺」


 それは、自分の甘さのことを指したのか、それとも不意に接近した新宮にどきりとしたことを指した言葉なのか。

 ――いや、多分、その両方だろう。







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