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「驚いたわ。まさか志村くんがここにいるなんて」
「い、いやその、ごめん」
「何故謝るの?」
「こっそり覗くみたいなこと――というか、まんまなことしちゃったし」
ばつが悪そうに一心は言う。
それに対し、新宮はふうと嘆息する。
「別に気にしないわ。他人の視線なんて」
「それより!」
そんな二人の会話に割って入った青年は、一心の肩を掴んでこう言う。
「どうだった! すごかったでしょ、『NEW WORLD』!」
「『NEW WORLD』?」
頭にハテナを浮かべて困惑する一心に対し、新宮はいたって冷静に、青年に静止をかける。
「待って金城さん。彼、困っているわ。何をどこまで説明したの?」
「――う、何も説明していなかった」
「あきれた」
冷たい瞳で青年――金城を見つめる新宮に、彼はちょっとたじろぐ。
コホンと咳払いをした金城は、こう切り出した。
「君、えーと志村くんだっけ?」
「は、はい」
「君は、AR――拡張現実という技術を知っているかい?」
「はい、詳しくはないのですが、何となくは」
AR(拡張現実)。
それは、近年開発された新しい技術で、人間が知覚する現実環境をコンピュータを用いて拡張するというものである。
簡単にいうなら、人間の視覚にデジタルなヴァーチャルを反映させる技術とでもいうべきか。
「そう、彼女がやっていたのはその拡張現実を用いた『NEW WORLD』というゲーム――いや、eスポーツさ!」
「eスポーツ、また最近よく聞くワードですね」
eスポーツとは、簡単にいうなら競技化されたゲームのことである。
海外では、既に一定の地位知名度を獲得しており、プロスポーツ選手と同じレベルの賞金が課せられた大会だって珍しくない。
おそばせながら日本でも、近年ようやく認知されてきた分野である。
プロゲーマーという職業が、最早鼻で笑われる時代ではなくなってきたのだ。
「『NEW WORLD』は、大きく分けて対人戦を行う『ヴァーサス』と、仮想エネミーを討伐するタイムを競う『エネミーハント』の二種類があって、彼女がさっき行っていたのは後者さ」
「へー!」
拡張現実もeスポーツも近年よく聞くワードではあったが、一心にはあまり実感がなかった。
あくまでTVの向こうの世界の話だと思っていた。
それが、今こうして目の前にあるということに、ちょっとした感動を覚えていた。
「で、僕たちは『NEW WORLD』をプレイするクラブチーム、【エインヘリヤル】。クラブっていってもまだ発足したてで、二人しかいないんだけどね」
そういってはずかしそうに笑う金城。
それでも、彼の笑顔には、心の底から楽しそうな感情がにじんでいた。
「すごいですね。俺も新宮が戦っているのを見て、ちょっと興味がわきました」
「そうか! それならちょうどよかった!」
「――はい?」
金城は、がっしりと一心の両肩を掴んでこういった。
「どうだい、僕たちと一緒に『NEW WORLD』をやってみないか!?」
瞳を輝かせて、金城はそう一心を勧誘した。
それに、一心は少し考え込む。
今回目撃した光景はかなり衝撃的で、この誘いはかなり魅力的だ。
実際、ちょっと興味もある。
そうして、一心が出した回答は、こうだった。
「――お断りします」
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