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ブレイド&ブレイド~ARの刃、鮮やかに舞う~  作者: 宇奈木 ユラ
第四章 二人の刃は、流麗に
23/28

4-3

 ゴーグルをかけ、設定を変更したりしながら、一心はこう新宮に話しかけた。


「なぁ、新宮。【エネミーハント】って最初に俺が見た奴であってるよな?」


「えぇ、そうね。その認識で概ねあっているけど、たぶんモンスターの姿かたちは違うと思うから、そこは気を付けないとね」


 そんなことを柔軟で足を伸ばしながら、彼女は答える。

 なにをどう説明しようかと言ったような表情で、新宮はこう言葉を続ける。


「貴方が最初に見たミノタウロスなんかは、体形は人型だから構造上人間基準の動きしかできなくて、比較的弱いんだけれど――」


「けど?」


「動物型や異形型だと構造から動きが読みづらいから、ちょっと苦戦しがちになるかも知れない」


 成る程、と一心も柔軟を始めながら頷く。

 今回の相手はケルベロスと名がついているので、多分獣型。

 予習としてアニマルビデオは見てきたけれど、それが役に立つかどうかは一心にはわからない。

 そのことに、若干一心は不安になる。

 この二日間、一心は新宮と金城のサポートで、基本を習得に重点をおいて練習してきた。


「それ用の練習をしてこなかったのだが、大丈夫か?」


「大丈夫よ」


 新宮はそういって一言で一心の不安を両断する。


「志村くんのポテンシャルが高いことは、分かってたから、基本さえしっかりできていれば、並以上に戦えると私たちは判断したわ」


「――ポテンシャル、ね」


 いまいちその高いというポテンシャルに、まったく心当たりがない一心は、ちょっと不服といった表情を浮かべる。


「――さて、準備は大丈夫かしら志村くん」


「あぁ、まぁ不安はあるけど、準備はできた」


 そういって柔軟を終えた二人は立ち上がり、ARゴーグルに電源を入れて、疑似感覚デバイスと、【ハンドコントローラー】を同期させる。

 ちょうどその時、今まで戦っていた二人の試合が終わり、彼らがどいて一心たちにスペースを開ける。

一心たちは、そのスペースの手前に並んで立ち、ゲームを起動させ、ゲームウインドウを操作する。

 そして、【アークケルベロス討伐】の項目をタップ、パートナー設定は事前にしてあった為、お互いのプレイヤーネームがチャレンジャーの項目に表記されている。


「――じゃあ、スタートさせるわよ」


「ばっちこい!」


 二人は、同時に【ゲームスタート】をタップする。

 その瞬間、視界がゲーム用に切替わる。

 一心の視界の端に、青と緑で自分と相棒の新宮のHPゲージが表示、そして反対側に、自分たちのモノとは長さが違う、赤いHPゲージが表示されていた。

 そして、目の前に空気からにじみ出るように、異形の怪物が召喚される。

 5m近い巨躯、黒い体毛、深紅の爪牙――そして、三つの首を持った犬のような怪物。

 神話由来、そしてゲームでなじみ深い怪物、ケルベロスがそこにいた。

 そして、それと同時に視界に10と言う数字が踊り、開始までのカウントが始まる。

 9、8、7、とカウントが進むたび、一心の中で不安が加速する。

 9、8、7、とカウントが進むたび、一心の中で不安が加速する。 

 ――そして、それと同時に不思議な高揚感も胸に押し寄せる。

 その高揚感の正体は、闘争心。

 一心は、その感覚になつかしさを覚える。

 この、強敵を前にした「勝てるのか」という不安、そして「勝って見せる」という闘争心のない交ぜになった不思議な高揚感。


「(――この感覚、薫と戦った時以来か)」


 一心は、この感覚を「楽しい」と感じた。

 カウントは、どんどんゼロに近付く。

 近づくにつれて、その高揚感はどんどん肥大する。

 そして、ゼロになった瞬間――、一心はその高揚感に身を任せることにした。


「行くぜ、新宮!!」


「やるわよ、志村くん!」



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