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市営体育館の中に入ると、区画が大きなネットで四等分されていた。
その中の一区画、そこに向かう新宮たちに続いて一心が向かう。
そこには4~5人の大人が、見慣れたゴーグルとデバイスを持って動き回っていた。
新宮たちがその一団のもとに向かい、手をあげて挨拶をする。
二人の姿を見た一団のうち、今まさに休憩中といった風の男女が、同じく手を上げる。
「あ、金城、遥ちゃんおっすー」
「お疲れ様です、鮮花さん」
その中の一人、ツーサイドアップの大学生くらいの女性が、新宮に挨拶をし、それに新宮が言葉を返す。
もう一人の金髪の男性は、同じく入ってきた金城に近付く。
「よっす、元気だったか」
「講義忙しかったけどねー」
そういってお互いハイタッチをパチンと交わす二人。
一心は、金髪の――口割かない言い方をするならチャラい男性と素朴なイメージの金城が仲が良さそうなのは、意外に感じてしまった。
そんな二人とは対照的に、ちょっと所在なさげに立っている一心であったが、ツーサイドアップの女性――新宮曰く鮮花さんが、一心に視線を移す。
「あ、その子が今度新しく入るっていう子?」
「どうも。志村一心です」
そういってペコリと頭を下げる一心に、鮮花と青年が近づいてきた。
「君が、噂の志村くんね! 金城くんから話は聞いてるわ」
嬉しそうに女性が言う傍らで、満面の笑みで青年が一心の肩をバンバンと叩いた。
「俺は門脇エイジ、こっちは黒田鮮花。大学で【NEW WORLD】をやってるサークルチーム【エインヘリヤル】――ってそれは知っているか」
「はい、新宮から聞いていました」
そう、新宮が所属しているチーム【エインヘリヤル】はもともと金城たちの大学にあるサークルのチーム名だ。
現状、同じ高校生で【NEW WORLD】をプレイしている友人がいない新宮が、混ぜてもらっているという感じだ。
――多分、この辺が新宮が部活を作ってみたいという理由の一端なのではないかと、一心は考察していた。
「よし、まず軽く準備運動したら俺とやってみようぜ新入り!」
そういって調子よさげに肩を組んで一心を連れて行こうとした門脇。
しかし、その肩を新宮が掴んで止める。
「駄目です。志村くんは、私と先約があります」
「先約?」
「志村くんの加入で、例の限定ミッションの参加条件が整ったので、そっちを先にやります」
「ん、あぁアレか! 【アークケルベロス討伐】か!」
――【アークケルベロス討伐】。
これが、今回のメインイベントになる。
年齢制限あり、且つペア限定ミッションで、おまけに挑戦回数は一回のみ。
それだけでも特別感のあるミッションではあるが、さらにこれを特別にしている要素がある。
それは、世界ランキング。
このミッションのクリアタイムは、本部のサーバーに集計され、全世界でのランキングという形で発表される。
そしてランキング上位者には、何かしらのフィードバックがあるそうだ。
「遥ちゃん、楽しみにしてたもんね」
「それならしゃーないな。新入り、新宮の邪魔しないように気をつけろよ」
そう言って門脇と黒田は、一旦一心たちから離れた。
「――じゃあ、二人ともさっそくウォーミングアップして、やっちゃおう!」
金城の言葉に二人は頷いて準備を始めた。




