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ブレイド&ブレイド~ARの刃、鮮やかに舞う~  作者: 宇奈木 ユラ
第三章 新しい道は、往々に
16/28

3-5


▽▲▽


 二人がやってきた学食は、今日も割と盛況していた。

 この七崎学園の学食は、安くてボリュームのあるメニューで有名であり、育ち盛りや部活動でカロリーの消費が激しい運動部生徒に重宝されていた。


「まぁ、俺はあまり利用しないけどな」


「そうなの?」


「基本弁当派、たまにサボって購買の焼きそばパンだからな」


 そういって一心は、手に持った弁当を軽く振り、新宮に存在をアピールする。

 二人は、たまたま空いていた席に腰掛けて、話を続ける。

 一心は、持ってきた弁当を広げ、新宮は日替わり定食(鯖みそ)に手を付けながら話を続ける。


「毎日お弁当だなんて、志村くんのお母さまはすごいのね。うちは、毎日お金だけ渡されて学食よ」


 まぁ、それでも不満はないのだけれど、と新宮はひとりごちる。


「――いや、コレ俺が作ってるんだけれど」


 一心のその発言に、新宮が目を見開く。


「元々、両親が共働きでな。小さい頃から手伝っていたんだ。高校入ってからは、料理とかの家事は母さんと分担してこなしている」


 ちなみに、朝陽は家事ができない。

 ずぼら、がさつ、大雑把の三拍子揃っている為、とてもじゃないが任せていられないのだ。


「なんというか、意外だわ。男の子ってそういうことには疎いと思っていたから」


「今時じゃあ、珍しくもないんじゃないか? 大学行ったら一人暮らししたいし、今から最低限のスキル身につけておく方がいいだろ」


 平然とそういうことを言う一心に、うっと言葉を詰まらせる新宮。


「わ、私も頑張らないと」


 小声でそんなことをつぶやいた新宮を、一心は聞き逃さなかった。

 そして、なんとなくやっぱりかと思うのであった。

 思えば、ここ数日で新宮のイメージは、一心の中で随分変化した。

 最初は――というか元々のイメージは“七崎のラスボス”の異名に恥じぬ完璧超人、最強女子といった感じだった。

 それが、知合ってみれば、どこか抜けていて中々にほっとけない系女子だったなんて。


「――まぁ、本当にラスボスだったら、ここまで断るのに苦心しなかったんだけどな」


「何かいった?」


「いや、なにも」


 そういって、昨日の残りモノを詰め込んだ弁当をかきこむ一心。

 あらかたの中身を食べ終えた一心は、これ幸いと話を斬りこむ。


「それで、今度の土曜の話なんだが――」


「待ち合わせは、13時に学園の校門前で」


「いや待ってそうじゃない」


 ここで一心は、一瞬ためらうが、意を決してこう言った。


「悪い、俺はやっぱり【NEW WORLD】はできない」


 すると、新宮の眼がすっと細められる。

 その表情に、一心がびくりと肩を震わせる。

 新宮のその瞳に見据えられると、何か自分が悪いことをしたかのように感じられるのだ。


「私、何か貴方の気に障るようなことしたかしら?」


「い、いや、新宮は悪くない。これは、俺の問題というか、なんというか」


 一心はちょっと焦って新宮の言葉を否定する。

 ここで一心は、覚悟を決める。

 ちゃんと、自分のことを正直に語って、分かってもらおうと――自分は、新宮の望むような人じゃないと。


「俺は、剣道をやっていて――」


 そして一心は先日妹にも話した過去を、語りだした


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