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ちょっと短いです
▽▲▽
ボフッ。
そんな音を立てて、大きなぬいぐるみにまみれたベットにうつ伏せに倒れこむ少女がひとり。
長い黒髪は少し濡れ、頬には少し赤みが差している。
その少女、新宮はふぅと満足げに息を吐き、仰向けに寝がえりを打つ。
これから新宮は睡眠に入るのだが、その前にふと思い出すのは、あの少年のこと。
志村一心。
今年の春に、クラスメイトになった赤毛の少年と言う印象で、新宮自身もさして興味も持っていなかった。
そして他のクラスメイトと変わらず、特にかかわらずに終わるのだろうと思っていたのだが、今週にはいって状況がやや変わる。
彼に、【NEW WORLD】をプレイしている姿を目撃されたのだ。
これも機会だと思って一緒にやらないかと誘ってみたが、最初の勧誘は失敗したけど、めげずに次に誘ってみたら半分OKしてくれた。
それで、最初は楽しさを知ってもらおうと、手加減して遊んであげようとしたんだけれども――
「まさか、初心者であそこまで動けるなんて」
実際に戦ってみて、新宮の予想も予定も完全に崩れた。
元々は、適度に手を抜いて、わざと一撃を受けて負けようとしたのだ。
まずは、勝ってみてその喜びを知ってほしかったからだ。
だが、実際はそうはならなかった。
それはひとえに、彼の基本的な実力がとても高かったからである。
初めての競技に触れても臆病に様子見に走らず、一気呵成に攻め込んでくる度胸、変化する状況を的確に把握し最善手を打とうとする機転、新宮が攻勢に移る瞬間に即座に回避に向かう勝負勘の強さ。
技術面などはまったくまだまだなところであったが、その試合で見せた精神面での素養は素晴らしいものがあった。
思わず、新宮が本気にならざる終えない程度には、一心は強かった。
「志村くん、意外と強かったな」
ぼそりと、新宮が呟く。
志村くんとは、どんな人物なんだろう。
なんであんなに強かったのだろう。
普段何しているんだろう。
そんなことをつらつらと彼女は考える。
同級生の、ひとりの男の子のことを此処まで考えることも、興味を持つことも、新宮にとって初めてのできごとであった。
そのことに、彼女は自然とワクワクした。
「――彼となら、もしかしてアレができるのかもしれない」
そんなことを考えて、明日一心に会えることを楽しみにながら、彼女は布団をかぶった。




