第937話白と青のグラデーション2
ミグとの決戦が幕を開ける。
俺の前には現在ミグだけが立っている…
他の連中は両陣営とも示し合わせたかのように俺達から離れたところで戦闘を開始した。
まあこれは当然のことだ。
権能持ち同士の戦いでは権能の概念を持っていないものは勝負にすらならない。
言い方はきついかもしれないが、いても足枷にならないで多少は役に立つ可能性があるのは、向こうならアゼルメーテ…
俺の側ではリーゼだけだろう。
同じアラウザルゴッドとはいえ、エリスではさすがに荷が重い。
その時だ。
『大丈夫。距離は離れたけどサポートは任せてよ。共鳴の概念は健在って…ミグのヤツいきなり使うみたいだね…アゼルメーテを始末したらすぐに行くから待っ…』
ブチッ…
それはリーゼの神通と共鳴の概念が遮断される音だった。
「…連携なんかさせないよ?こないだでお前ら二人揃っためんどくささは痛感した」
ミグは言った。
ミグのヤツ、いきなり権能の概念使ってきやがったよ…
俺も使えば弾き飛ばせるだろうが、リーゼのあの言い方は未来予知によってミグの行動が見えてたってことだろう。
遮断されたら俺がマズイ状況ならリーゼは遮断前に俺に権能の概念を使うように促すはずだ。
それをしなかったってことはつまりは大きな問題はないってことだ。
そう。
他でもないウチの参謀様がそう判断したのだ。
なら俺の答えは決まっている。
権能の概念はまだ温存だ。
ミグが使えば使う程に僅かに権能の概念が弱体化することに気付いているのかはわからないが、気づいていようがいまいが、これで俺とミグの差は僅かながらさらに広がったわけだ。
ミグが権能の概念をどれほど強化しているのかはわからないが、俺以上に強化しているとは考えにくい。
ただ俺は権能の概念を手に入れた直後に、神格エネルギーを核玉の数値で100万にまで引き上げた件がある。
おかげで素の神格エネルギーでは既存のミグの神格エネルギーに負けることは絶対にないが、現在の権能の概念の力はどちらが上かはなんとも言えない。
ならば…
俺は神格エネルギーを解放する…
とは言ってもせいぜいが核玉の数値で1万程度…
はじめから全力で行くのは簡単だ。
だが、それはやらない。
権能持ち同士の戦いで1番大事なのは駆け引きだ。
「上等だ。俺単体なら勝てると思ってるのか?甘すぎる…そんなんだからてめえはリーゼにバカ呼ばわりされるんだよ?」
俺は脳内でそんなことを考えながら、ミグを挑発するようにそう言ったのだった。




