第933話権能の概念
「よっと…」
リーゼは俺の膝から降りると俺の正面に着地する。
コンコン…
その瞬間、玉座の間にノックの音が響く。
現在、玉座の間は立ち入り禁止のはずだ。
にも関わらず…てか、この気配は…
「リオ姉、入っていいよ」
やはり姉ちゃんだ。
「ん?リーゼが呼んだんだよ?」
「お前なあ?」
一体誰の為に立ち入り禁止にしてたんだと思ってる?
俺はその言葉を飲み込む。
「ごめんごめん。それからありがと。リーゼの為に…でももう大丈夫だから…さあ、リオ姉も交えて今後の策を話し合おうよ」
前半の本心から切り替えて、いつもの調子に戻ったリーゼは言った。
なら俺も切り替えるか。
「残る敵はルービスメゾル、ミグとアゼルメーテ、さらには最終目標にラピロア。ここまでは全員総意だな?」
「うん」
「ええ」
リーゼと姉ちゃんはそれぞれそう答えた。
「ねえ?鋭治?その話をする前に一つ聞かせてよ?権能の概念について。リーゼちゃんの話ではできないことはないって話だったけど、本当にそんな無敵の能力なの?」
「……たしかにねえな…ほぼ…」
俺は姉ちゃんのその言葉に一瞬考える素振りを見せてからそう答えた。
「ほぼ?煮え切らない言い方ね?だいたい同じ権能持ちには権能の強さで勝敗が決まるってのは予想できるけど、それ以外にも何かあるの?」
「まあ使えば使う程微量に権能の概念が弱まるってことぐらいか。それでも一定以下にはならないし、バカみたいに使わなければ強化するペースの方が早いが…」
俺の言葉に姉ちゃんは少し考える素振りを見せる。
「つまり権能の概念は消耗品…無尽蔵に使えるわけじゃ…いや、一定以下にならないのなら無尽蔵にも使えるんでしょうけど、それをやっちゃうと今後の権能持ち達との戦闘が厳しくなると?」
姉ちゃんがわかりやすくそう補足してくれる。
「たぶんリオ姉がやりたかったのはみんなの神格エネルギーの強化に権能を使って無敵の軍団を作ろうとしたんだろうけど、それは正直やりたくないかな…権能の概念は他の権能持ちとの戦いまである程度温存しておくべき。逆にそれがわかってたからこそリーゼは今回、無理をしてまで退かずにオルメテウスを始末するのを強行したんだけどね?」
リーゼは姉ちゃんの考えを理解した上でそう付け加えた。




