第925話再戦の眠鬼5
パチパチパチっ
その拍手はリーゼがしたものだ。
「いいねー。正直心配してたんだ。これで決まったらどうしようってさ?まあそれはさすがにつまんないからさー。もっとリーゼを楽しませてよ?ねえ?オルメテウス?」
リーゼは余裕綽々にそんな事を言った。
かたや古参のアラウザルゴッドでかたや生まれてから3万年も経っていない神々の中では赤子も同然なオリジンゴッドである。
あからさまな挑発だ。
だが、オルメテウスに怒りは湧いてこない。
ただのオリジンゴッドが開始早々に自分の親友であり、もっとも信頼している腹心であるティナを開始早々に敗北寸前にまで追い込めるはずはない。
同格…もしくは格上と見るべきだ。
オルメテウス自身も心のどこかでオリジンゴッドとタカをくくっていた認識を改める。
「真覚っ!!深層覚醒っ!!」
オルメテウスのステータスが限界まで跳ね上がる…
「へえ?この状況からリーゼと殺り合うんだ?バカなヤツって本当に頭の中が幸せで羨ましいよ。セリー、それからゴッズクローンのみんな。各自それぞれの攻撃対象を相手に適当に遊んできなよ。もう大勢は決したから気にしなくていいよ」
「「はっ」」
ここに来てはじめてセリーをはじめとしたゴッズクローン達がそれぞれの敵に向けて動き出す。
ギリッ…
それはティナの歯軋りの音だ。
「落ち着け。のせられるな。挑発だ」
「そうそう。挑発だよ。もっとも突っ込んでこようと防御に徹しようと降伏しようが、逃亡しようがこの状況からじゃもう何も変わらないんだけどね?」
言いながらリーゼは神格エネルギーを完全に解放する。
ティナの神格エネルギーを吸収したその数値は、核玉の換算で2146にもなる膨大な数値だ。
ティナの目は驚愕に見開かれるが、オルメテウスには驚きはない。
「その指輪の力か。隠していたようだが、お前の所業はそれぐらいの神格エネルギーがなくては説明がつかん」
「正解だよ。でも気づかないかな?自分で死刑宣告を読み上げてることにさ?たしかに今はステータスだけはお前の方が上だよ。けどそんなものはリーゼが神毒のまがいものの覚醒を使えばひっくり返る。正面から無策の殴り合いをしても余裕な相手に、絡め手こみのリーゼがどうやったら負けるか教えてほしいよ」
そう言うリーゼのオッドアイの瞳には既にオルメテウスの死が明確に映っていた。




