第909話群雄割拠の新時代9
「じゃー、そっちの化石共もようやく黙ってくれたみたいだし、パパとリーゼと話をしようか?ミグ?」
「話すことなんか…!?っ」
ミグはリーゼのその言葉の直後飛びかかろうとするが、一歩踏み出したところで止まる。
ちなみに今回は俺達は何もしていない。
何故ならアゼルメーテがミグを引き寄せて物理的に止める未来が見えていたからだ。
「待てミグ。白天はこれまでの白天とは違う。これと無策で争うのはさすがに得策ではない」
「くくくっ、さすがはゾンビスライムの保護者だ。物分かりがいいじゃねーか?あ?アゼルメーテ?」
俺はアゼルメーテに対して邪悪な笑みを浮かべながら言った。
ちなみにこんな会話をしている間にもリーゼの思考は恐ろしい速度で未来予知とこの場にいる全員の思考…さらにはこのあとの展開の先読みや、全員を同時に相手した場合の勝率計算や、もっと言うなら俺には理解不能な思考までもが回転している。
これたぶん人間の脳だったら焼き切れるんじゃねーか?
そういえばリーゼは俺や姉ちゃんとは違い、転生者じゃないからこそ、生まれた時からアメーバだ。
人間とは根本的に思考の構造が違うのか?
俺はそんなどうでもいいことを考える。
『褒めても何もでないよ?パパ?まあ大好きなパパの為にリーゼなりの人事は尽くすけどね?』
そう。
リーゼはこの化け物のような思考をしながらも片手間に俺にこんな軽口を叩けるヤツだ。
「アゼルメーテっ!!ラグアが目の前にいるのに…」
「ミグ、仲間にも言われたはずだ。お前もいい加減無策で突っ込む癖を直せ」
アゼルメーテはそこで一度言葉を切って俺に向き直る。
「して白天?話とはなんだ?一応読心は使っているが、お前の思考はブレすぎて全く読めん。我にもわかる言葉で頼む」
目まぐるしく多重思考を超高速で回転させるリーゼの思考を読心で読むのは、ほぼ不可能だ。
メドーとギッシュトートも先程リーゼの思考を読むのに失敗したのだ。
「なーに?リーゼの提案は簡単だよ。アゼルメーテ、そしてミグ。どうかな?ちょこっと休戦しない?」
「…ふざけ」
「いいだろう。だが、片方は我らでもらうぞ?」
「アゼルメーテ!?」
こちらの提案を即座に切り捨てようとしたミグに対し、アゼルメーテは答えた。
ミグは驚きと怒りが無い混ぜになり恐ろしい表情になっている。
「ふふふっ、理解が早くて助かるなー。パパはだいたいリーゼの考えがわかると思うけど、とりあえずそれでいいよね?」
「ああ」
リーゼの考え…
たぶん1割も把握していないが、共鳴の影響で骨組みぐらいは理解している俺はそう返事をするのだった。




