第894話迷宮宇宙67
俺は千手観音モードを展開する。
その瞬間ビッツは目に見えて狼狽える。
「!?っ、お待ち下さいっ!!殿下のお嬢様であったとはいざ知らず…」
ビッツは言いながら指をパチンと鳴らす…
映し出されたミグとリーゼの映像の中にいくつもの赤いシルエットが現れる。
だが、ミグもリーゼもそれに気づいた様子はない。
「殿下、これでお嬢様のご安全は僕が保証します。チェルシーを含めた動かせる全てのプリミティブゴッドを投入いたしました。お嬢様があのアラウザルゴッドに負けることはありえません」
チェルシー…たしか第五階層で話したヤツか。
だが、そうまでして俺を引き止める理由は?
ミグとリーゼは既に第六階層を超えて第七階層に入っている。
俺が倒したキメラは神界守護神が代替わりしたことより復活していたが、ミグの千手観音モードの触手の巻き添えを食らって魂が抜け落ちたところに追撃をもらって完全に消滅した。
現れた扉には迷わずリーゼが飛び込み、ミグは即座に猛追する。
「申し訳ございません。立場上これ以上は僕の口からは申し上げられません。お嬢様に指一本触れさせないことだけは約束いたします。どうかご容赦を…」
空中に映像が流れる中、ビッツは低姿勢を貫く。
だが、ここで俺は思い至る。
ん?どっち道プリミティブゴッドにリーゼを守らせてるなら、コイツ殺してからリーゼのところに向かってプリミティブゴッドを含めたリーゼ以外の存在を皆殺しにしても同じじゃねーか?
その方が神格エネルギー的にもおいしいし、そもそもここにいることに俺にメリットがない。
「!?っ」
ビッツは俺の殺気を感じとったのだろう。
一瞬ビクリと体を震わせるが、すぐに元に戻る。
「殿下、殿下が何をお考えか大方予想はつきますが、それは得策とは言えません。何故ならウェポンゴッドは僕の匙加減でいくらでもこの場に召集可能だからです。はっきり申し上げましょう。僕の目的はこの場に殿下とあのアラウザルゴッドを呼び寄せる事。そしてそのアラウザルゴッドと戦うこと…それ以上の目的はございません。心配でしたら読心を使っていただいても構いません」
俺はその言葉の通りにビッツに読心を通してみるが、言葉以上の情報は何もわからない。
チェルシーが未だ俺に直接会わない理由…
さらにコイツの自分の口からはこれ以上言えないと言う言動…
そう。
コイツは言わないではなく言えないのだ。
何故なら必要最低限の作戦以外なにも知らされていないから。
俺はそう結論を出すのだった。




