第892話迷宮宇宙65
「貴様…その力…正気か?」
ルルアートは心底驚愕しているのか、虹色の瞳を見開く。
「あ?どういう意味だ?」
俺は質問の意図がわからずにそう聞き返した。
「かつて陛下は仰った。不滅の概念は死の概念だと…獲得したら最後、終末の時まで全てを見届ける義務が発生する…生きながら死に絶えて尚、その先に滅びはこない。陛下はどれだけ私達が進言しようと不滅だけは頑なにとることはなかった。アラウザルゴッド…いや、ラグアと言ったか?貴様にはその覚悟はあるのか?ただ全宇宙の行く末を見届ける…そんな時を未来永劫見続ける覚悟が…」
俺はルルアートの言葉を途中で遮る。
「行く末?知らねーよ、そんなもん。それはその時考えればいいだろ?全宇宙を相手によりどりみどりな殺戮の毎日…。少なくとも俺は飽きる気は一切しねーがな?」
俺は笑みを浮かべながら言った。
俺のその言葉にルルアートは最初は驚いた表情をしていたが、すぐに殺気をみなぎらせる。
「……イナゴが…害虫が…何がアラウザルゴッドだっ!!原始の概念」
「概念融合、消滅。核玉、劣化融合、消滅」
俺の核玉の劣化融合を合わせた概念融合と、原始の概念とかいうルルアートの能力は拮抗する…
原始の概念はたぶん無属性の概念融合だ。
そんでもって原始強化はたぶん真覚と同等だ。
原始の波動はたぶん物理技だろうが、威力がえげつない。
これがここまで見てきたルルアートの能力だ。
なら…
「神帝憑依っ!!」
俺はそれを発動した。
アラウザルゴッドの能力に似通った技はあったが、核玉の能力に似た技は今のところない。
温存?いや、それは薄い…なら神帝の絶対領域の時に原始の波動で対応してきた説明がつかない。
ラピロアなら神帝の絶対領域には神帝蟲毒で対応してくる。
つまりルルアートは核玉に対処できる技を持ち合わせていない。
俺の神帝憑依で跳ね上がった驚異的な身体能力の一撃が、ルルアートを反応すらさせないまま、上下真っ二つに引き裂く…
俺の膨張した神格エネルギーは核玉換算で3万を超える…
不滅の領域纏いが切れているから、万が一があったが、どうやら杞憂に終わったようだ。
俺もこの仮説がなければ怖くて神帝憑依は切れなかった。
「陛下……見ておられますか…ルルアートは役目を全う致しました…」
その言葉を最後にルルアートは神格エネルギーを完全に散らすのだった。




