第887話迷宮宇宙60
吸命の概念…
それはリーゼが最初に獲得した概念だ。
概念でありながら命を…神格エネルギーを喰らう…
そんな概念が本来なんのデメリットもなしに使えるわけがなかった。
弱点…いや欠点とまで言えるデメリットは多々ある。
一つは連続使用はできても持続使用ができないこと…
一つは神同士の戦いで言えば、遥か前のタイミングから発動を準備してはじめて発動すること…
そんな鬼畜のようなデメリット…
戦闘中にタイミングを図りながらどうにか合わせて一撃を加える…それが本来なら限界のはずだった。
そしてそんなことをするぐらいなら、当然普通に攻撃した方がマシなので、はっきり言って使い物にならない。
だが、リーゼの並外れた演算能力…多重思考…そして他者の心を読む能力に、未来予知が…吸命の概念を完璧なまでの実戦運用を可能にした。
〜
「核玉だと1527ってとこか。まあゴッドバーストの時はかなり取りこぼしちゃったしこんなもんか」
リーゼは言った。
「クソガキ…」
ミグは毒づいた。
コイツの戦い方は三島煌一とは違う。
感覚派で受け流してきた三島煌一とは違い、コイツは考えて考えて戦うタイプだ。
たぶん、概念変質化じゃ先程と同じ結果になるだろう。
なら…
「概念錬成、吸命」
ミグは起玉の能力の一つを切った。
それは起玉のほぼ全ての概念の使用を可能にする能力…
同じ力を得れば条件は同じなはず…
それがミグの答えだった。
だが…
「バカだねー?」
「なにこれ?ぐっ!?」
吸命の概念を得たはいいものの、全くと言っていいほど使いこなせなかったミグはリーゼの触手の一撃で片腕を斬り飛ばされる。
「それはリーゼの為にある概念なんだよ?お前みたいな脳筋ゾンビが使えるわけないよね」
「真覚っ!!えっ!?」
リーゼの追撃を躱すためミグは堪らず温存していた力の一つである真覚を切って後退するが、ミグは左右真っ二つになって素っ頓狂な声をあげる。
「これだからバカはいつまで経っても成長しないよね?なんで奇襲をしかけた時には感じ取れなかったリーゼの神格エネルギーが今は感じれるのかを、疑問にすら思わないなんてさ?」
ミグの真後ろに仕掛けられた、神級装備、雲神の指輪で隠蔽された、リーゼの相当量の神格エネルギーがこもった天刃の概念…
気づかず後退したミグはそのまま神格エネルギーを散らすのだった。




