第879話迷宮宇宙52
時はほんの少しだけ遡る…
〜
キャッスル・オブ・リーゼ、4階、中腹…
ギースを一刀の元に引き裂いたミグはいきなり全身の力が抜けるのを感じた。
「!?っ」
その状況にミグは驚愕の表情を浮かべる…
本来ならそんなことはありえないからだ。
起玉に神格エネルギーを戻していた時ならわかる。
だが、今のミグは正真正銘の全力なのだ。
本来、アンチステータスゾーンのデバフなど通用しない。
こんなことはありえるはずはなかった。
だが、リーゼの全身全霊を注いだ思現の神により、ありえないことが起きていた。
そして…
「くくくっ、ようやく出番か?待ちくたびれたぜ?」
ニヤニヤと好戦的な笑み…そしてラグアそっくりとも言える殺気を隠そうともせずにそれはきた。
「お前は…」
「そーいや名乗ってなかったな?俺は三島煌一。鋭治…まあわかりやすく言うとラグアの兄だ」
言いかけたミグに対し、三島煌一はそう答えた。
「そーいえばそう言ってたね?たしかにあたしの力は強力なアンチステータスゾーンでかなり抑えられている…けど…その程度であたしに勝てると本気で思ってるの?」
ミグはその瞬間、恐ろしいスピードで三島煌一に肉薄する…
アンチステータスゾーンで抑えられているとはいえ、ミグの神格エネルギーは起玉の換算で503にも及ぶ…いかに抑えられているとはいえ、この中では紛れもなく最強の身体能力を持っていた。
だが…
「いい動きのガキだな?いったいいくつの修羅場を潜ったらこうなるんだ?」
「!?っ」
ミグの動きに合わせて繰り出された三島煌一の蹴りをミグは紙一重で躱す…
だが、三島煌一の攻撃はこれで終わらない、原理の概念を足場にすることでさらに立体的に…人間ではありえない軌道を描いた反対の足の蹴りがミグに迫る…
「ちっ!?」
それをミグは片腕を3本の触手に変え、1本で受け止め、もう1本で弾き飛ばし、さらには最後の1本で引き裂こうとする。
最後のミグの触手は確実に三島煌一の首筋を捉える…
だが、三島煌一の首が飛ぶことはなかった。
三島煌一はそのまま10メートルほど吹き飛ばされた位置に着地する…
ゴキゴキッ…
首の関節を入れ直す嫌な音の正体は三島煌一だ。
「くくっ、概念ってヤツは便利だよな?今までどう頑張ってもできなかった動きを可能にしてくれる…」
三島煌一は言ったのだった。




