第872話迷宮宇宙45
その頃…
「マリアは敵戦力の分断に成功。さて頃合いだね?出ようかな?」
「リーゼ様、ご武運を…」
その言葉とともにその場をあとにしたリーゼに対し、ギースは恭しく跪いたままそう言った。
答えるものはいなかったが…
〜
「クソっ…」
ジオは分体2体の攻撃を躱し、追撃してきた3体の分体をまとめて弾き飛ばす。
だが嵐のような分体の連続攻撃は全く衰えない。
「ミ…」
ジオがミグに対して言いかけた時だ。
ジオの意識はそこで閉ざされる…
「言わせないよ?それをしたらリーゼは撤退しなきゃいけなくなっちゃうでしょ?」
「「!?」」
ジオの比較的近くで戦闘を繰り広げていたロロとシーラはその存在に気づき驚愕の表情を浮かべる。
神格エネルギーは一切感じなかった。
つまりは分体。
にも関わらずジオはその存在に引き裂かれたのだ。
「まあ教えてあげる義理もないからご想像にお任せするよ。不意打ちしたシャドウラルファはともかくミュン以外はギリギリ対応できる数の分体しか差し向けてないし、ミグが気づくのはまだまだ先だろうね?」
リーゼは言った。
神級装備、雲神の指輪…
それがリーゼの神格エネルギーを感じとれない原因だ。
術者の神格エネルギーの気配を消す…
それだけの能力だが、こと隠密行動に関しては右に出るものはない。
ロロとシーラもまたミグに何も言うことなく引き裂かれる…
「甘い…甘すぎるよ…そんなんだからお前らはミグ1人のワンマンチームなんだよ?」
言いながらもリーゼは全く状況を理解していないギゼルとミストを触手の一撃で引き裂く…
プロトクローンに媒介クローン…さらにはラグアの分体も持ち出したリーゼの真の目的はミグの神の千里眼の死角を作ることだった。
リーゼは視覚の中をプロトクローンや媒介クローンを操作しながら移動しているのだ。
ミグには仲間が媒介クローンにやられた風に見えているはずだ。
そしてジオが何を言いたかったのか…
それはミグに神眼の神を使わせたかったのだ。
そうミグは自分に向かう媒介クローン以外には神眼の神を使わなかったのだ。
理由は神眼の神を使えば媒介クローンの内包概念が暴発するからである。
リーゼはそこまで読んでのこの行動だった。
「さあさあ?おバカさんが気づくまでリーゼと楽しく遊ぼうか?」
ミュラとシャドウラルファを触手の一撃で引き裂きながらリーゼは言った。
もっともリーゼの言葉はミグの耳にはマリア達との戦闘音にかき消され届くことはなかったが…




