第870話迷宮宇宙43
リーゼの腹心、ギースとマリアは最高幹部の中ではもっとも新しい最高幹部である。
もっともラグア直轄の他の最高幹部よりは権限は劣る…
ちなみにギースの役職は最高幹部、第一星帝直轄、将軍である。
「それは失礼しました。ですがあなたにまさかそのような口を聞かれるとは思いませんでした」
「私が寝返り人形と言ったことか?撤回するつもりはないぞ?リーゼ様の妹君であらせられる本来のラルファ様はともかく、ラルファ様の姿をした人形ごときに私が敬意を払う義理など存在しない」
マリアの言葉にシャドウラルファは思う。
話し方…そしてこの尊大な物言い…
それはとある人物に通じるものがある。
「ずいぶんとセリーの影響を受けているようですね?シャドウのイグロシアルではそんな素振りは見られませんでしたが…」
「思考することさえ制御されたシャドウ共と私達オリジナルを比べること自体が不愉快だ。一つだけいうなら…セリー義姉様は私の目標だ」
マリアは答えた。
同じ最高幹部とはいえ、ラグアの直属の最高幹部とリーゼの最高幹部では明確な上下関係が存在した。
そんな中、ライナーに敗れてからのセリーは完全に裏方に回っていた。
後続のラグア陣営の配下達の管理のほとんどは、セリーがやっていたと言っても過言戦闘力ではない。
戦闘力自体は中級魔神で完全に成長が止まってしまったセリーがまだラグアの為に働けること…
セリーが自ら出した結論だった。
ライナーに敗れたとはいえ、リーゼとリオーナを除くラグアの配下の中ではセリーの采配や管理、演算能力等は随一だ。
そしてマリアはそんなセリーを慕っていた。
ラグア陣営でリオーナと並ぶもっとも優れた頭脳を持つリーゼに仕えていたからこそ、セリーを心から尊敬していた。
もっともセリーはライナーに敗れるまでは、ライバル意識を拗らせライナーを毛嫌いしていたが、マリアがギースに対してあるのは純粋な仲間意識だけだ。
その一点だけはセリーに似なかったと言えるのだろうが…
「ほう?あのような中級魔神止まりの役立たずが義姉様ですか?あなたの底も知れますね?」
シャドウラルファはわざと嘲笑しながら言った。
これはオリジナルのラルファではありえないことだ。
シャドウラルファはミグと行動を共にしているうちに徐々にだが、感情が芽生え始めている。
「…撤回しろ。セリー義姉様はこのまま終わるようなお方ではない。少なくとも人形ごときが愚弄していいお方ではない」
シャドウラルファの言葉に怒気を放つマリアは神格エネルギーを全開にするのだった。




