第860話迷宮宇宙33
〜第六階層〜
俺は扉をくぐり抜けた。
部屋全体は薄暗いが、アラウザルゴッドである俺には全くと言っていいほど問題はない。
それこそ部屋全体が完全な闇であろうが、俺には見えるのだから…
俺は部屋の中央に居座るそいつに目を向ける。
虎の顔…
鷲の翼…
龍の胴体…
蛇の頭の尻尾が9本…
何かはわからないが、鋭い鉤爪が伸びている真っ黒な6本の足は全て宙に浮いている…
扉に描かれていたごちゃ混ぜのキメラである。
「グルルルルルル…」
キメラは俺を見据えると敵対心を隠しもしないで、威嚇した。
当たり前だが、キメラもこの暗闇の中で俺を完全に捉えているようだ。
「領域纏い、概念、不滅」
俺は念の為、不滅の領域纏いを発動させた上で千手観音モードを展開する。
ダンッ…
先に動き出したのはキメラの方だった。
そのスピードはとんでもない…
それこそ強化した現在のリーゼの素のステータスに匹敵する…
「リーゼ達を置いてきたのは正しい判断だったみたいだな。いきなりレベル上がりすぎだろ…」
俺はその超スピードの鉤爪の一撃を躱すとタイミングをずらして俺に噛みつこうとしてきた蛇の頭を触手の一撃で斬り飛ばす…
「グギャアアアアっ!!」
堪らずキメラは悲鳴をあげるが、悲鳴をあげながらも虎の口からは七色のブレスが放たれる…
別に喰らっても問題は無さそうだが、余裕で躱せるものをわざわざ喰らう必要はない。
俺は空中を2回蹴ってキメラの背中に周りこむ…
キメラは急所であるであろう首の後ろを鷲の翼を重ねることでガードするが…
「終わりだ。死ね」
俺の約半分ほどの神格エネルギーを込めた触手の一撃は無慈悲に鷲の翼も虎の首も平等に引き裂く…
スタッ…
俺が地面に降りたとほぼ同時にキメラが体を維持できなくなって崩壊する…
さらに俺の体には神格エネルギーが流れこんでくる。
「ん?神格エネルギー?やっぱりウェポンゴッドじゃねーみてえだな」
俺は呟いた。
流れてきた神格エネルギーは核玉の換算で9…リーゼより少しだけ多いが、リーゼの動きは未来予知とあの異常な思考力があってこそのものだ。
リーゼより弱く感じるのは仕方がない。
キメラが崩壊したところには、おそらく次の部屋に進めるのであろう扉が出現している…
そして…
「なんだあれ?」
俺はキメラが崩壊した場所にあるもう一つのものを見て言ったのだった。




