第851話迷宮宇宙27
ミュンのその言葉に一同は耳を傾ける。
「誤解しないで聞いてほしいんだけど、確かにアレは強さ自体は完全に化け物だよ。でも…無敵じゃない…」
「そりゃ無敵ではないだろ?事実ミグはアイツを何度も倒してるんだからよ?」
ミュンの言葉にそう言ったのはジオだ。
事実リーゼはミグの攻撃は全く防げずに、殺されている。
「そういう意味じゃなくて…なんて言ったらいいのかな?見た目は強がってたけどアレはたぶん自信をなくしているって言うか…たぶん自分の力をあんまり信用していないんだと思う…」
「あの実力でか!?」
妹のその言葉に姉であるミュラは目を見開く。
「うん、お姉ちゃん。はっきり言って私は落ちこぼれだよ。だから挫折なんか数え切れないほど味わった。逆にさっきのリーゼって子供…なのかな?アレは完全に天才の部類…。生まれ持った才能が桁違いなんだろうね。でも私にはわかるよ。あれはごく最近に派手に失敗して心が折れかかっていた。私達を相手に…自分より劣るものを叩きのめして自信を取り戻そうとしている感じ…。そんな感じを私は感じた」
ミュンのその言葉に一同は黙って続きを聞く。
「みんなは今落ち込んでるみたいだけど、私はそうでもない。挫折なんか日常茶飯事だった。みんなもどちらかと言うと天才の部類だけど、あのリーゼって子はそれ以上…。たぶん今までまともな挫折なんか味わったことがないんだと思う…。次…。たぶんもう一回心をへし折れば再起不能とまでいかなくても、そう簡単には立ち直れないと思う。これはみんなみたいな天才じゃないポンコツの私だからわかること」
「いや、ミュンちゃんは…」
「そうゆうミグちゃんは私達の中でも1番の天才だよ?でも、ミグちゃんは挫折で心が折れるタイプじゃない。けどアレは違う」
ミュンのその言葉に一同は少しの間無言になる。
そんな中最初に口を開いたのはミュラだった。
「だとして…妾達でアレの心をへし折れるのか?」
「やるしかねーだろ?お前らいつまでもミグにおんぶに抱っこしているつもりか?」
ミュラにそう強い口調で言ったのはロロだった。
かつては実力はミグよりロロの方が遥かに上だった。
今では完全にひっくり返っているが…
余談だが、ミグが未だに敬称をつけて呼ぶのはロロだけだった。
遥か格上のアゼルメーテでさえ、ミグは敬称をつけない。
もう俺をそんな風に呼ぶ必要なんかないのにな…
ロロはそう思うが、落ち目になっても昔と変わらない態度で接してくれる家族の存在がロロはたまらなく嬉しかった。
「じゃー、みんなの目標はとりあえずアレに好き勝手させないことかな?」
ミグのその言葉に一同は強く頷く。
勝てないまでも一矢報いてやると…
その覚悟と共に…




