第830話迷宮宇宙9
「パパ聞いて?たしかにだんだんと神級獣や神装獣に遭遇する数は減っているんだけど、新たな神級獣や神装獣が全くいないってわけじゃない。まあリーゼが最初にこの事実に気づいたのは、神の千里眼を雑に展開してたからなんだけどさ?」
あのスピードで疾走しながらそんな事をしてたのかよ…
コイツその気になればもっとペースを上げられるんじゃねーか?
俺はそんなどうでもいい事を考えたが、それはリーゼの話の腰を折ることになるから口には出さない。
「それがだいたいこの階層に入ってから10分ぐらいした頃かな?まあパパと叔父さんはイラつきはじめてたみたいだから言わなかったけど」
リーゼは続ける。
「そこからは神級獣や神装獣の出どころを探す為に神の千里眼を全力展開したよ。さすがにきつかったよ…どこにも死角がないようにこの広大な永久凍土中に展開するのは…脳…アメーバのリーゼにそんなものがあるのかはわかんないけど、ショート寸前だったよ…」
あのリーゼの対応の答えがこれか。
いや、やべーだろ?
俺達のステータスで散々走り回った永久凍土に隈なく神の千里眼を展開する?
化け物じゃねーか…
一応自分の娘だけど…
「そんで最初にその発生場所を見つけたのが、今から5分ぐらい前…でもそれは偶然そこから出ただけかも知れなかったから、他の神の千里眼は展開したままだった。ごめんねパパ?リーゼ冷たかったでしょ?」
「ああ、それはいい。続けてくれ」
俺は謝ってくるリーゼにそう言うと続きを促す。
「それで5分後の今…それは全く同じ場所から出てきた。発生ペースは5分に一体…そりゃーこのペースで狩り続ければだんだん減ってくわけだよね」
「だからそれがわかったところで何の意味があるんだよっ!!バカにもわかるように説明しろやっ!!」
「うっさいなー。今説明してるでしょ?ちょっと待ちなよ?叔父さんはアメーバのパパやリーゼより単細胞なんじゃないの?」
話の腰を折られて若干不機嫌になったリーゼに兄ちゃんは押し黙る。
「でもね?その発生のしかたがまた面白いんだよね?突然、永久凍土に穴が空いてさ、そこから一体だけ出てきてだいたい3秒ぐらいで穴が塞がるんだよね。パパ?叔父さん?この穴の奥には何があるんだろーね?」
リーゼは笑みを浮かべてそう言った。
ようやくこのマラソン地獄の突破口が見つかった。




