第808話二人の参謀…2
「あ?この状況で仲間割れとか二人とも正気か?おい?つーか、リーゼならまだわかるが姉ちゃんらしくねーぞ?」
俺はキレ気味に言った。
そんな俺の言葉に姉ちゃんがリーゼに放っていた殺気は少しだけ緩和する。
「ごめんなさい…アイツの事になると…つい…」
姉ちゃんは一度そこで言葉を切ると、真っ直ぐ俺を見てから言い直す。
「でも反対なのは本当よ。悪いけどリーゼちゃんにあの狂った悪魔を制御できるとは思えないし…100歩…いや10000歩譲って鋭治が直接クソ兄貴を見ておくならまだマシだけど…」
どっちの味方をしても面倒な事になるとわかってくれたのか、姉ちゃんが譲歩してくれた。
まあ妥協点はここしかないか…
これ以上はリーゼばかりを贔屓することになる。
「わかった。折衷案だ。兄ちゃんの強化はする。だが、メンバーは見直す。俺といっしょにくる主要メンバーはリーゼと兄ちゃんだ。エリスと姉ちゃんは本拠地の防衛を任せる。リーゼ、一月やる。その間に兄ちゃんの強化は終わらせろ。2人ともそれでいいな?」
エリスの不屈の概念の回復は今回は見送るしかない。
「…ええ」
姉ちゃんは若干の間があったがそう返事をした。
「異論はないよ。リオ姉も譲ってくれたしリーゼも折れるところは折れるよ。すぐに取りかかるよ」
「待て。とりあえず最高戦力と準最高戦力に指示を出したら一度ここに戻れ。他のヤツはしばらくリーゼの指示に従え。あ、姉ちゃんは少し話があるから残ってくれ」
俺のその言葉に参加メンバーはそれぞれ返事をすると退出する。
部屋には俺と姉ちゃんだけが残される。
「姉ちゃん、ありがとな?折れてくれて…」
「いいのよ。反対した半分はあたしの感情論だし…でももう半分は別よ?あの悪魔に力を持たせるなら絶対に目を放しちゃダメ。いいわね?それとあたしからもお礼を言わせて?あたしをメンバーから外したのはあたしの為でしょ?」
「まあ、さすがにわかるか。あと兄ちゃんは俺の専属にする。単独じゃ姉ちゃんには近づけさせないが、これからは接触する機会も増えると思う。大丈夫か?」
「それは………努力するとしか言えないわ…」
姉ちゃんは歯切れ悪くそう答えた。
それからしばらくリーゼが来るまでの間、姉ちゃんの愚痴に付き合ったのはまた別の話だ。




