第807話二人の参謀…
「そんな事はないよ?じゃー逆に聞くけど、これ以外にリオ姉は妙案があるのかな?」
姉ちゃんの殺気にリーゼは一歩も引かずにそう答えた。
「へぇ?自分のその愚策が妙案だと?あんたはもう少し賢い子だと思ったんだけどね?あんたのやろうとしている事は悪魔…いや…そんな言葉も生易しい狂人に凶悪な爆弾を預けようとしてるのよ?」
そう。
リーゼの案は三島煌一の集中強化である。
具体的にはタンクの神格エネルギー…そして、今集めている各地で処理をはじめた元同盟勢力の最高神達の神格エネルギーを全て三島煌一に回す。
さらには、イグロシアル最高戦力上位勢も元同盟最高神の捕獲に当てて、そのスピードをさらに早める。
もちろんその程度では長い間培ってきたイグロシアル最高戦力上位勢の神格エネルギーには遠く及ばないし、仮にその神格エネルギーをイグロシアル最高戦力上位勢に回したとしても大した強化にはならない。
だが、三島煌一は違う。
元々の戦闘に対するセンスが異常なのだ。
現在の状態でさえ、リーゼが倒すのに1%の力が必要と判断した存在…
そんな存在に神格エネルギーを注ぎ込めばどうなるか…
いろいろと問題はあるが、僅か1ヶ月でインスタント戦力の誕生である。
だが、そんな姉ちゃんに対してリーゼの目は真剣だ。
「そんなことは百も承知だよ。制御できるとは言わない。でもこれが最高ではなくても、今打てる最善策だよ。今パパは一秒でも早く力をつけなきゃいけない。この意味がわかる?わかってないからそんな事が言えるんだよね?てかリオ姉はそもそも自分の言ってる事がわかってるのかな?それ答えになってないよ?リーゼはこの問題を打開する妙案が他にあるか?って聞いてるんだよ。ないよね?あるなら言うよね?」
姉ちゃんとリーゼの話は平行線だ。
しばらく無言の睨み合いが続く…
そんな長い沈黙の末、先に口を開いたのは姉ちゃんだ。
「………鋭治…戦闘許可を頂戴。口で言ってもわからないなら仕方ないわ」
「へぇ?リオ姉はいつまで自分の方がリーゼより上だって錯覚してるのかな?いいよ。どっちがパパの頭脳に相応しいか白黒つけよっか?パパ?場所を変えていいかな?」
二人とも俺に言ってはいるが、目線はお互いから一切切らない。
「いいわけねーだろーがー!?」
思わず俺は叫んだのだった。




