第66話敗北
俺はブラックホールの中で消滅と再生を繰り返しながら思う。
負けた。
クソがっ
まさかミグがあんな化け物だとは思わなかった。
この身体を消滅させれば、配下に預けた触手から復活するのは簡単だ。
だが、負けは負けだ。
この世界にきて、ここまで手も足も出ないで負けたのは3回目だ。
1度目はメダカ野郎に殺されかけた時。
2度目はフリー○様軍団から逃げ回っていた時。
3度目が今回だ。
正確には他に、絶対に勝てない相手と相対した事は何度かあるが、それは相手に戦闘の意思がなかったし、ノーカンだ。
だが、今回の様に逃亡すら出来ずに、ここまで完膚無きまでに叩きのめされたのははじめてだ。
なんなんだよあの化け物。
もし、アイツが神託を持っていて俺のスキルが見られていたら完全に詰んでいた。
もっとも、アイツが神託なんて持ってたらとっくに神級にまで上り詰めているだろうが…
とにかくあのガキは絶対許さねえ。
次で必ず殺す。
まあ、実年齢ガキじゃないだろうが…
とりあえず、そのためには今の俺の力じゃ遠く及ばない。
アイツの本気。
多重発動した帝級スキルの威力はまさに災害だった。
てかどーするかな?
このまますぐに再生してもいいが、俺が生きている事がバレるのは色々マズイ。
エリローズ、聞いてんだろ?
エリローズ 「はい。聞いてますよ。手酷くやられましたね(笑)」
(笑)じゃねーよ。
まあ、いいや。
神託を使ってエリス達に通信を繋げ。
エリスと通信が繋がった。
「エリス、聞こえるか?俺だ。」
「はっ、ラグア様。エリスでございます。こちらは無事に制圧いたしました。帰りが遅かったので何かあったのではないかと、私如きがラグア様の心配をするなど大変恐縮なのですが…」
「ああ、お前の言う通り久々にぼろ負けしたよ。」
「っ!?、ラグア様。ご無事ですか?相手は誰ですか?リリスですか?すぐにセリー達を呼んでヤツを…」
「あーやめとけやめとけ。リリスにはお前達じゃまだ勝てないし、アイツ如きには間違っても俺は負けねーよ。それに、復活しようと思えばお前達に預けた触手のカケラからいつでも復活できる。」
「でしたら…?」
「俺に勝ったのは、ミグとか言う魔王だ。正直悔しいが完敗だ。アイツは化け物だ。まあ、いずれ殺すけど。いいか?今から言う事をよく聞け。まずセリーに言って、フィリアに連絡を取れ。そしてフィリアの転移でお前達は一旦エルライド王国に戻れ。じきにノーマンが来るが相手はお前がしろ。カティアはとりあえずエルライド王国に連れて行け。今回みたいな場合お前達がついていた方が安全だ。」
「はっ、して、ラグア様はいつお戻りになられるのですか?」
「俺は今からしばらく身を隠す。ヤツらに生きている事を悟られるわけにはいかないからな。とりあえずこの身体は消滅させてお前の持っている触手のカケラの方に意識を移す。今後しばらくは表向きはお前が俺の後継者だ。頼んだぞ。」
「はっ」
俺は自らの不滅の帝の再生を止める。
すぐに身体が消滅して、意識は暗い卵の中に行く。
これ以上の再生は行わない。
既にHPは元に戻っているが、肉体を再生させると気づかれる可能性がある。
「エリス、聞こえるか?」
「はい、お疲れ様ですラグア様。」
「フィリアが来たら教えろ。俺は疲れたから少し休む。」
「はっ」
睡眠を必要としないアメーバだが、今回はさすがに疲れた。
俺はフィリアが来るまでの間、休む事にした。