第759話偽りの神帝ティナ・ポロワ3
「やあ、やっと目覚めたね?長かったよ…ボクが一体どれだけ待ちわびた事やら…あ、こんな話してもわからないか。はじめまして。ボクはラピロア。新たなる覚醒神よ」
突然…そう本当に突然転移してきたその化け物は言った。
「っ!?オルメスっ!!逃げてっ!!発動、概念、遊戯、豊穣、炎舞、神氷、天刃、光天………」
ラピロアを見た瞬間のティナの行動は早かった。
次々と概念を発動させる…その数は膨大だ。
「ずいぶんと好戦的な子だね?君の配下?概念、消失」
ただ一言ラピロアがそう呟いただけで多重発動していたティナの概念は掻き消える…
だが、ティナは諦めていなかった。
概念がダメなら肉弾戦とばかりに、全神格エネルギーを右腕一本に込め、ラピロアの顔面に叩きこむ…
だが…
「ちょっと用心して第四形態で来て良かったよ。第三形態だと僅かながらに削られたかも知れないし」
ラピロアには一切のダメージはなかった…
ティナはこれがどうゆう状況かは知っている…
今まで逆のパターンはあったからだ。
ティナちゃんが全身全霊を込めた神格エネルギーよりもコイツが無防備に適当に出してるだけの神格エネルギーの方が上!?
化け物…
ティナは思った。
「領域纏い、概念、遊…っ!?」
つい最近覚えた奥の手を使おうとしたティナの動きはそこで止まる…
突如、ラピロアと名乗る存在から放たれた死そのものと言えるような殺気により全く動けなくなってしまったのだ。
「…頑張ってるみたいだけど、君じゃボクには絶対に届かない。そもそも挑む資格がない。所詮、君はそこまでの存在なんだよ?それでもやるって言うなら来なよ?これ以上ボクと新たな覚醒神の会話の邪魔をするなら、さすがのボクも放ってはおかないよ?」
勝てない…
ティナはこの時生まれてはじめての敗北を悟った。
ティナはこの日を境に狂ったように神格エネルギーを集め、己の技量を磨き続けた。
〜
それから更に数千兆年という長い長い時が流れる…
この頃にはオルメテウスはいつの間にか眠鬼と呼ばれつつあった。
曰く、平和を愛するその覚醒神は決して起こしてはいけない…なぜならその悠久の時を生きる者は眠っているだけだからだ…そしてその牙は決して抜けた訳ではないからだ…調停という…その者の行動理念を妨げる時、その者を起こした者は己の行動の愚かさを後悔する事になるだろう…
当時の最高神達の間では、この様な伝承が伝わっていた。
更に同時期…後にラピロアに老害と揶揄される…18柱の帝の名を冠する絶大なる力を持った神々達も台頭しはじめる…
そんな帝の神々達はこぞって自分こそが次の覚醒神にと力を求め争う…
そんな時代が終わりを告げたのは19番目の帝…後に孤高のアゼルメーテと呼ばれる存在が覚醒神へと至ったことがはじまりだった。




