閑話魔王ミグ・ヒピー
あたしの名前はミグ・ヒピー。
一応この世界の頂点の一人だ。
現在あたしはロロ様の星、空に赤く輝く星、死王星にいる。
この星は砂漠と、散発的にある建造物、ロロ様の居城、徘徊する大量のアンデットぐらいしかいない星だ。
ちなみにアンデットはロロ様が死霊魔法で生み出した配下だ。
ジオっちがラグアとか言うクソ野朗に殺されてから、三年がたった。
あたしの心は全く晴れない。
ジオっちとあたし、ミュラっちとミュンちゃんは共に神魔大戦を乗り越えた親友だ。
ジオっちが殺された時、あたしは怒りで頭が真っ白になった。
あの場でロロ様が現れなければ、あたしはミュラっちとミュンちゃん以外を皆殺しにしてでも、ラグアとか言う魔王を殺しに行っただろう。
アイツらは仲間でもなんでもない。
同じ魔王だからって、同格を気取っているアイツらは正直嫌いだ。
ミュラっちが優しいからってアイツらは調子に乗りすぎだ。
みんな考えてほしい。
アリでもなんでもいい。
いくら同じ魔王の称号を持っているからって、その気になれば1秒かからずに殺せるような相手が、ある日突然、あたかも対等の様な口を聞き出したのだ。
正直、ミュラっちが止めなければ何回殺しているかわからない。
みんなは対等の口を聞くアリと仲良くできるだろうか?
あたしには無理だ。
神魔大戦前には同格の友人もたくさんいた。
みんなもう既に生きてはいないが…
とにかくあたしの数少ない親友を殺したアイツだけは必ず殺す。
ただ、ロロ様がこの星にいる限りそれは無理だ。
正直あたしは、ジオっちの仇が討てれば自分の命などどうでもいい。
目を閉じればかつての友人が笑っている。
あたしもすぐにみんなのところに行くかもしれない。
でも、それでもいい。
このままじゃあたしの精神が壊れる。
〜〜〜
ある日、ロロ様は龍王星で戦っている、テオレーム様とソドム様を止めるために死王星を離れた。
行くなら今しかない。
アルムスに向かおうとする、あたしに声をかけるものがいた。
「ミグちゃん…」
「ミュンちゃん、ちょっと行ってくるね。ミュラっちとロロ様によろしく今までありがとうって伝えて?」
「ミグちゃん、それは自分で言った方がいいよ。」
「ミュンちゃんごめんね?たぶんラグアとか言う魔王を殺したあとに、あたしはテオレーム様に消されちゃうから言えないや。だからミュンちゃんお願い。」
「…行かせない」
あたしは少し驚いた。
ミュンちゃんがここまで自分の意見を言うなんて珍しい。
基本的にあまり自分の意見を言わない子なのだ。
でも嬉しいな。
友情っていいなー。
でも、あたしはもう戻れない。
「ごめんね、ミュンちゃん。目が覚めたらロロ様とミュラっちに伝えてね?ミュンちゃんが友達でよかったよ。」
あたしはそう言って威圧を解放する。
同時にステータスも全開にする。
ミグの全開の威圧を受けて、ミュンはそのまま気を失なって倒れる。
あたしはその体を支えてそっと寝かせる。
「じゃー、行ってくるね。」
答えの返ってこない言葉を最後にあたしはアルムスに向かう。
〜〜〜
現在〜
目の前にいるのは、真っ白と表現していい少年。
だが、対照的な真っ赤な瞳からは殺意がビリビリ伝わってくる。
「ガキが。ジオっち殺しといて、楽に死ねると思うなよ?」
あたしは憎悪を込めて目の前の魔王に言った。




