第706話兄と姉3
「…たしかにそうね。あたしはお金…あんたは権力…鋭治は…何になるのかしら?あたし達はそれぞれ自分達のやりたいように生きてきたわ」
言いながら姉ちゃんはおそらくスキルで作ったのであろうタバコに火をつけた。
前世から姉ちゃんは滅多にタバコを吸わない。
たぶん兄ちゃんと話しているだけで相当なストレスなのだろう。
「俺もそうだったぜ?数十年前に鋭治が死ななきゃいずれ俺達3人で世界を牛耳る日もきたかも知れねーな?」
対する兄ちゃんは楽しそうである。
まあ兄ちゃんはこうゆう性格だしな…
「それで莉緒那。本題のお前の質問に対する答えだが…鋭治に負けちまった。こう言えば理解できるか?」
姉ちゃんは兄ちゃんの言葉に納得の表情になる。
力で全てを手に入れようとした兄ちゃんだ。
それに対してはどこまでも貪欲なのである。
俺にコテンパンに叩きのめされた兄ちゃんがどうするのかは、読心や感情を読む力を使うまでもなく容易に想像がついた。
「あんたは変わらないわね。一切悪びれてないところが余計に始末に悪いわ。…あんたのせいで20年無駄にしたって言ってもあんたにはわからないでしょ?」
「血の繋がりも盃の繋がりも関係ねえ。いつの世も家族は助け合うもんだぜ?」
ビキッ
その兄ちゃんの言葉は姉ちゃんの感情を逆撫でするには十分過ぎた。
俺は神格エネルギーで姉ちゃんの概念の発動を抑え込む。
今姉ちゃん、神毒使おうとしたぞ?
帝級クラス相手にそんなもん使ったら骨も残らずに消滅する。
「あたしがあんたに助けられた事なんか一度だってあったかっ!!散々利用しやがって!!鋭治っ!!止めるなっ!!殺すっ!!前世でも邪魔されて転生してからもっ!?冗談じゃないわよっ!!この疫病神はあたしの手で…」
「姉ちゃん落ち着けって…兄ちゃんもちっと言葉を選べ」
一触即発の空気である。
こりゃ俺抜きで兄ちゃんと姉ちゃんは合わせられねーな…
「ほう?鋭治だけじゃなくて莉緒那?お前もか?こりゃますます期待が膨らむってもんだな?次のステージってヤツに…」
対する兄ちゃんは殺されそうになった事など一切気にした様子もなくそんな事を言っている。
その態度が姉ちゃんをさらに逆撫でするのだが、兄ちゃんは気づかない。
〜
うん。
たぶん…いやほぼこの2人に和解は無理だ。
「…よくわかったわ。兄ちゃんも姉ちゃんも2人共、必要最低限以外は会うな。もしどうしても用がある時は俺が同席の場合のみ会う事にしよう。兄ちゃんは普段は古代アルムス…リーゼの支配する惑星にいてくれ。仲良くできねーならしゃーないよな?」
俺は仕方なく妥協案でそう結論を出して、2人に了承させるのだった。




