第58話観光初日終了
ノーマンと別れて買い食いも飽きた俺達は、繁華街に向かう。
イカサマ賭博のおかげで、俺達の懐は暖かい。
時間はもう既に夜だ。
だが繁華街に入ってすぐに、またバカをみつけてしまった。
「あ?金?ねーよ?私は魔王だぞ?店ごと更地にされてーのか?」
完全にただのヤクザだ。
「………セリー、あのバカを回収して来い。」
「…はっ」
そして、例のごとくの土下座である。
「申し訳ございません。少しはしゃぎ過ぎてしまいました。」
「どいつもこいつも、問題ばっか起こしやがって修学旅行じゃねーんだよ?」
「ラグア様、修学旅行とは?」
エリスが聞いてくる。
めんどくさいので、俺はカティアに説明をぶん投げる。
とにかくこれで全員揃った。
〜〜〜
「あ?入店拒否?ふざけんな。国ごと地図から消されてーのか?」
え?フィリムと対してやってる事が変わらないって?
それはそれ、これはこれだ。
ラグアに常識などありはしないのだ。
とにかくなんとか店に入るのに、成功した。
「ラグア様の御前だ。今からこの店は貸切だ。他の客は叩き出せ。」
エリスが付け加える。
店員は最初は不満そうだったが、エリスが殺気をちらつかせると押し黙った。
カティアはもう完全にいろいろ諦めている。
え?威力業務妨害?この世界にそんなもんねーよ?
〜〜〜
客が1人もいなくなった店内には、俺達の声だけが響く。
帰り際、俺は店の店長に言う。
「なんかあったらいつでも言えよ?この店にどうこう言うヤツは俺が潰してやるよ?」
店長はぺこぺこしている。
え?やっている事ヤクザだって?
知らん。
俺はいいの。
店を出てから、とりあえず今日は解散になり、観光1日目は終了した。
いろいろあったけど楽しかったな。
「カティア、また明日な。」
カティアは真っ青を通り越して、蒼白な顔をしながら
「はい。明日もよろしくお願います。」
と言った。
なんかフラついてるけど、大丈夫かな?
「ライナー、送ってやれよ?小さい女の子の1人歩きはダメだろ?危ない殺人鬼に狙われるかも知れん。」
え?俺?
俺は今日は危なくない殺人鬼だからいいの。
だが、ライナーが行こうとすると、
「ひっ1人で帰れますから大丈夫ですっ。」
と言って走り出してしまった。
うん、元気になったみたいでよかった。
「さて、俺達も帰るか。」
「「はっ」」
こうして、ラグアにとっては楽しい観光の、カティアにとっては地獄の観光の1日目が終わった。




