第693話コレートル追撃戦(in地球)46
〜リーゼが部屋を出て行ってから約10分後〜
部屋に2人の人物が転移してくる。
「パパ、戻ったよー」
リーゼとリーゼに連れられた姉ちゃんである。
姉ちゃんのもう既にいつもの取り繕った笑みをやめて、いろいろ諦めた表情をしている。
「………ねえ?本当に鋭治なの?」
ようやく絞り出した言葉がそれだった。
俺は姉ちゃんに答えようとするが、それより早く兄ちゃんが口を挟む。
「あ?莉緒那?どっからどうみても鋭治だろーが?お前は俺達の可愛い弟を忘れちまったのか?なあ?」
「忘れてなんかないわよ。ただ急に異世界からきた弟だなんて言われて信じられるあんたの方がどうかしてるのよ?煌一?」
「どう見てもこの目は鋭治だろ?それから莉緒那?たまには昔みたいにお兄ちゃんって呼んでもいいんだぜ?」
兄ちゃんのその言葉に姉ちゃんは露骨に嫌な顔をしてギロリと睨みつける。
「そんなのあんたにしかわからないわ。あんたにそんな呼び方するぐらいなら死んだ方がマシよ。煌一、あんた、今まであたしに何したか覚えてる?」
「なんの話だ?俺が可愛い妹の嫌がる事なんかするわけないだろ?なあ?」
「どの口が…」
姉ちゃんがそう言いかけた瞬間だった。
兄ちゃんの雰囲気が変わる。
兄ちゃんが放つもの…
それは完全な殺気である。
それも前世の俺以上の…
「莉緒那ぁ?俺の聞き間違いか?家族想いのお前が俺にひどい事を言うわけないよなぁ?なぁ?」
「!?っ…」
「やめろ。2人共」
びくりと体を震わせた姉ちゃんが何を言おうとしたのかわからないが、俺はさすがに止めに入る。
「あ?鋭治?邪魔すんな?どう考えても莉緒那が…」
「あ?こっちのセリフだ。兄ちゃんこそ聞こえなかったのか?」
止めに入った俺にさえも殺気をぶつけてくる兄ちゃんに俺は全力の殺気を込めながら言った。
地球で制限があるとはいえ、アラウザルゴッドの全力の殺気である。
兄ちゃんは反射的に後ろに飛び退く…
「鋭治…てめえマジで俺相手に本気じゃ…ちっ…俺の負けだよ」
そう言った兄ちゃんの殺気はなりを潜めた。
おそらく兄ちゃんは殺気のぶつけ合いで俺の実力の一端を知るに至ったのだろう。
昔から兄ちゃんは妙にそういう感覚が鋭いからな…
それにしても…
昔は巻き込まれるから放置していた2人のイザコザをはじめて止められたかも知れねーわ…
俺はそんな事を思うのだった。




