第674話コレートル追撃戦(in地球)27
「フロゲニ。仕事よ。制圧して?」
「ハイ。ミオサン」
三島莉緒那はフロゲニと呼んだ大男とそんなやりとりをした。
制圧…
最悪片方は殺してもよかったからこそ、三島莉緒那はデリンジャーの弾丸を撃ち込んだ訳だが、そもそもデリンジャーの弾丸を受けて何事もなかったかの様に立ち上がる様な男を殺せるか?
そう判断した三島莉緒那は制圧という言葉を使ったのだった。
シュドレは目の前の男を観察する。
ロシア系の大男…
縦にも横にもデカい…
大柄だが、隆起している筋肉はフロゲニがただのデブではない事の証明だ。
わかりやすく説明するなら、フロゲニの体型はさながらヘビィ級ボクサーのそれだった。
化け物…
自分がアルムスに転生する前ならそう判断しただろう。
だが、今はそれなりの修羅場をくぐり抜けてきた。
フロゲニは三島莉緒那の前に守る様に立っている。
三島莉緒那に辿りつくにはフロゲニを突破しなければならない。
シュドレは念動の概念で底上げした身体能力でフロゲニに迫る。
フロゲニは向かってくるシュドレに大して腕を振りかぶるとフックを繰り出してくる。
鈍足で単調な動き…
そう思ったシュドレはフロゲニのフックを身をかがめる事で難なく躱す。
そのままフロゲニの懐に入ったシュドレはフロゲニの鳩尾目掛けて思い切りぶん殴った。
だが…
「チイサイヒトはハヤイデスネ。タダチカラタリナイデスヨ?」
フロゲニのその言葉の直後にシュドレに衝撃が走る。
真上からフロゲニの肘が降ってきたのだ。
シュドレは床に体を思い切り打ち付けても威力が止まらず、床にバウンドして浮き上がる。
その浮き上がったシュドレの頭部目掛けてフロゲニの強烈な蹴りが入る。
シュドレは4〜5メートル吹き飛ばされた。
「ソレカラカルスギマス。アーモウシンジャイマシタ?」
「化け物…」
そんなシュドレの有様を見たカティアは震える声で言った。
既にカティアを囲っていた防護服達はフロゲニの戦いに巻き込まれないように距離をとっている。
「オジョーサンバケモノチガウ。ワタシグンジン。ソレカラロシアマフィア。ドッチモクビニナリマシタガ」
フロゲニは既に死んでいるであろうシュドレには興味を失ったかの様に言った。
〜
フロゲニは元々軍人だった。
だがフロゲニの周りでは黒い噂が絶えなかった。
フロゲニがいる部隊が制圧した都市では毎回毎回行方不明者が出るのだ。
フロゲニが行方不明者達を殺した証拠は何もない。
だが、フロゲニが絡んでいる事は明らかだった。
フロゲニは軍人をクビになった。
その後フロゲニはとあるロシアマフィアに入るが、敵対組織20人以上を相手に体術のみで皆殺しにしたまではよかったが、味方の被害…それもフロゲニの巻き添えで多数の重傷者を出したのが不味かった。
結果、味方であるはずの者からも脅威と判断されたフロゲニはマフィアから処刑される寸前だった。
そんなフロゲニを救ったのは、たまたまロシアに訪れていた三島莉緒那だった。
三島莉緒那はフロゲニに自分の兄に近い…天性の才能の様なものを感じた。
三島莉緒那は大金を叩いてフロゲニを自分の専属護衛に引き入れた。
〜
そんな過去があったフロゲニは三島莉緒那を恩人として慕っていた。
「ミオサン。コノオジョーサンデスコシアソンデモ?」
「ダメ。あんたが遊んだら死…てかそれよりちゃんと制圧しなさいよ?」
三島莉緒那が未だに立ち上がらないシュドレの方に目を向けながら言った時だ。
「オー、オドロキマシタ」
ヨロヨロと立ち上がるシュドレを見てフロゲニは楽しそうに言ったのだった。




