第673話コレートル追撃戦(in地球)26
ガチャッ…
それは三島莉緒那が愛銃デリンジャーの弾倉を入れ替える音だ。
口ではああ言ったが、三島莉緒那がシュドレを撃ち抜いたのは確かめる為だった。
〜
催涙ガスもスタンバトンも効かない?そんな人間いるの?
でも事実目の前にいるし、その2つがまともに効果がない人間を三島莉緒那は1人知っているが、あれは別だ。
あの化け物…実際には自分の兄だがあれは兄どころか人間かどうかも怪しい。
至近距離で拳銃の弾丸を避けられるヤツなんかアイツ以外に知らない。
あれはいつだったか…
クソ兄貴に向けて差し向けられた、拳銃を持ったヒットマン3人を相手にアイツは傷一つ負う事なく、3人をその場で皆殺しにした。
あれは人間業じゃない。
そんなクソ兄貴の姿が重なって見えた三島莉緒那は得体の知れない恐怖から、目の前の男を排除するべきと判断。
その結果がこの発砲である。
〜
当たった。
確実に…
胴体に2発…
三島莉緒那は安堵する。
デリンジャーは22口径、装弾数2発の殺傷能力が低めの女でも楽に扱える小型拳銃だが、服装から防弾チョッキを着ている様子もない人間が胴体に2発もまともに受けてまともに動けるはずはなかった。
そう三島莉緒那が弾倉を入れ替えたのは、ただの癖だった。
弟…先程名前が出たが、鋭治同様に三島莉緒那は射撃の腕にはあまり自信がなかった。
そもそも正面を切っての殺し合いはあまり得意ではない。
弾倉を入れ替えたのは外してもすぐに次弾を発砲できるように体に染み付いた癖である。
だが…
「嘘…化け物…!?」
ここに来て三島莉緒那の表情ははじめて驚愕に染まる。
何故ならたった今確実に被弾した男がまるで何事もなかったかの様に立ち上がったからだ。
だが驚愕に表情を変えたのは一瞬で三島莉緒那はすぐさま次の行動に移る。
だが三島莉緒那がやった事は大した事ではない。
ただコートのポケットに手を入れてモールス信号を送っただけだ。
それから僅か数秒…
防護服達の出てきた扉から催涙ガスが充満している室内にも関わらず、防護服でない大柄な男が出てくる。
顔立ちはロシア人…
身長は2メートルを超える。
「ミオサン。ダカライッタンデスヨ?カズダケのゴエイ二タカイオカネハラウノナンカムダデスッテ」
片言の聞き取り辛い日本語で大男は言ったのだった。




