第670話コレートル追撃戦(in地球)23
「私達は…」
カティアは答える前にどう答えるべきかを考える。
さっきの質問に関して何も追求されなかった。
つまり嘘はないと判断されたのだ。
イグロシアルのリオーナなら今回の様な場合こんな度ストレートには聞かず、あの手この手でカマをかけてくる。
そしてそんなカマの質問に答えようが、答えまいが、感情の変化で大半の事は読まれてしまう。
読心なんかなくてもこれだ。
改めて化け物である…
とカティアは思ったが、目の前の三島莉緒那の言動を見る限り、イグロシアルのリオーナ程の化け物じみた力はないと思う。
こんな度ストレートな質問をしてくる事がその証明…かと言って嘘はバレる。
それぐらいを見抜くの力は目の前の三島莉緒那は持っていると仮定してもいい。
なら…
「私達は少し遠いところから来て、友達と観光してました」
カティアは答えた。
嘘はない。
だがさすがに無理があった。
「へぇ…初見であたしの今の特技を正確に読まれるとはね…。ならもういいわ。確かにあなたの言葉には嘘はないわ。けれどまともに真実を語るつもりもない。観光してたのは事実でしょうね?遠いところから来たのも事実…。でもそれは答えになっていないわ。オーケー。質問を戻しましょう。あなた達は何者?あ、次はないわよ?」
次はない。
三島莉緒那のその言葉は本気だろう。
イグロシアルのリオーナを見てわかる彼女の本質は冷酷、残虐、狡猾につきる。
ラグアとは違い無駄な殺しや拷問はしないが、必要があれば躊躇なく行うことは確実である。
カティアは考える。
嘘はバレていないが隠している事もバレている。
こちらが異世界からきたと言っても信じるかどうかは正直微妙だろう。
なら…
ここでカティアは手札を1つ切る。
「わかりました。逆に聞きますが、もし私達があなたの弟さんの連れだと言ったら?」
カティアがそう言った瞬間だった。
三島莉緒那が硬直したのは…
そのまま三島莉緒那はこちらを真っ直ぐ見据える。
「………驚いたわ。まさか嘘がないなんて…弟が生きている?質問を変えるわ。弟の名前を聞いても?」
32年前…弟の死刑は確かに執行されたはず。
なら弟の名前を語る誰か?
その誰かはあたしがイタリアに行っているはずという情報まで仕入れている事から、ほぼ確実にクソ兄貴…もしくはその手下と繋がっている。
「三島鋭治…。彼はそう名乗っています」
もはや三島莉緒那の予想していた答えがカティアの口から出た。
「へぇ…」
三島莉緒那は意味深な笑みを浮かべるのだった。




