第669話コレートル追撃戦(in地球)22
「よく来たわね。そこら辺に座って?」
部屋に入ったシュドレ達が見たのは、イグロシアルにいるリオーナの姿そのままだった。
その姿はどう見ても実年齢76歳には到底見えない。
20歳と言っても納得する程の美貌と若さを兼ね備えていた。
だが、同時にカリスマ性というか、放つオーラも若輩者のそれではなかった。
支配者の風格とでも言えばいいのだろうか…
そんな存在が、部屋の最奥のソファーに座っていた。
強いてイグロシアルのリオーナとの違いを言えば全身を覆うあのコートだろうか?
イグロシアルのリオーナはどちらかと言うと体のラインが分かる服装をよく好んだ。
あんなコートを着ているリオーナは見た事がなかった。
イグロシアルのリオーナの話ではこの頃の三島莉緒那は老化により相当衰えていると言っていたが、自分の目からはとてもそんな風には見えなかった。
カティアは三島莉緒那に対し、油断なくその場に立ち尽くす。
シュドレもそれにならった。
「ふふっ、そんな警戒しなくてもいいのに?問答無用で始末するつもりならとっくにやってるわよ」
三島莉緒那は笑みを浮かべながら言った。
木島と呼ばれた男とは違い目が笑っていないなどということはないが、そもそも相手は三島莉緒那だ。
どこまで本気かわかったものじゃない。
「はじめまして。村田彩香です。こっちは木下悠斗…。本日はどの様な用件ですか?」
カティアは三島莉緒那の言葉には答えずにそう言った。
「若い子はせっかちねー?わかってるくせに?びっくりしたわよ?60年近くぶりに本名で呼ばれたのも、あたしが本来ならイタリアにいるって情報を知っていた事もねえ?あなた達はクソ兄貴…三島煌一の手先かしら?ねえ?クソ兄貴はどこまで知ってるの?クソ兄貴の目的は何?ねえ?ねえ?ねえ?」
「すいません、私にはわかりかねます」
そう答えたカティアに三島莉緒那は少しだけ目を見開いた。
嘘はない。
つまりは読みを外したか…
ダメだ。
やはり自分は老いたようだ。
感情の読みの精度も年々落ちているし、そこから割り出される考察に至っては最近ではかなりひどい。
昔はこんな事はなかった。
だから…だからこそ、こんなところでクソ兄貴に捕まるわけにはいかない。
じゃなければ何の為にイタリアに影武者を置いて、日本に帰ってきたのかわからない。
三島莉緒那は思った。
「わかったわ。質問を変えるわ。あなた達は何者?」
溜息を一つついてから三島莉緒那は言ったのだった。




