第54話はじめての転生者
セリーの短距離転移を繰り返し、俺達はリース森林国に辿りついた。
いきなりきたから、最悪、軍のお出迎えかな?とは思っていたが…
まさかの、無条件降伏ってマジかよ。
いや、テオレームが作った国の時点で俺、この国をどうこうする気はないよ?
アイツ怖い。
無理。
とりあえず、セリーを向かわせて同盟を結びたい意を伝えると今度は国賓扱いで迎えてくれた。
いやー、嬉しいねー。
リース森林国の国王との同盟はスムーズに進んだ。
俺、ちゃんと話し合いもできるんだよ?
向こうの王様ただのイエスマンになってたけど。
てか、時間が余っちゃったな。
10日程、この国に滞在する予定だったが…
まあ、たまには息抜きも大切だ。
俺は部下達を好きに遊んでこいとばかりに、放逐する。
一応、許可なく殺すなとは釘を刺しておいた。
合流は10日後だし、まあ後は好きに遊んでくれ。
俺も勝手に遊ぶ。
と言うわけで、俺は今商業区にいる。
たまには、観光もいいよね。
てか、俺の半径3メートルに誰も近づかないのは、何故だろう?
幻惑の帝の隠密は完璧なはずなのだが…
ブラブラ歩いていると子供達がこっちを見ているのに気づいた。
俺が気になったのは、三人いるうちの、真ん中の女の子だ。
いやいやいや、そんなに震えなくてもいいじゃん?
今の俺はラブ&ピースだよ?
観光に来てる時は人なんか殺さないよ?
ん?持ってきた玩具?
あれは生理現象だから仕方がない。
てか、震え方が尋常じゃない。
たぶん、あれは俺のステータス見えてるな。
帝級クラスでも、上位の俺のステータスを看破するってまさか。
あっやっぱり転生者だ。
すげー、はじめて見た。
てか、よえーーー。
平均ステータス約2万って…
池から出たばかりの、フリー○様軍団にビビりまくってた頃の俺と、同じくらいだぞ?
はじめての転生者よ?それでいいのかよ?
まーいいや、ちょっと話してみたいし軽く挨拶でもすっか。
そう思って、俺は軽く跳躍する。
女の子の目の前に来て話かけようとした時だ。
女の子は膝から崩れ落ちて、動かなくなった。
他の男の子2人も泡を吹いて痙攣してる。
…うわー、やっちまったわ。
前世も含めて俺、子供苦手なんだよなー。
そりゃ、友達の子供に手出ししたりしないけど、子供って敏感だから俺の殺気とかに気づく子も多いんだよな。
とりあえず、男の子は放置でいいや。
そのうち目覚めるだろう。
俺は何もしてないから知らん。
とりあえず、俺は女の子を担いで借りた宿の自分の部屋まで、ステータスに任せた力技で移動する。
この文だけみると、ただの18禁にしかみえないが、俺なんもしないからね?
〜〜〜
俺の部屋について、しばらくすると女の子は目を覚ました。
のだが、部屋を見てその表情は絶望に変わる。
やべっ、エリスの部屋にしとけばよかった。
俺は今更ながら、自分の馬鹿さ加減に気がつく。
椅子に縛り付けられ、苦悶の表情を浮かべながら絶命している玩具。
土星帝の力で、作り出した檻の中で昏倒している、他の9人の玩具。
この状況をみれば、どっからどう見ても俺はヤバイヤツだ。
まあ、元々いくつも国を滅ぼしてきた、魔王の時点でヤバイヤツには、変わりないだろうが。
マズイな。
第一印象は大切だ。
ここはにこやかにいこう。
俺は笑顔を作る。
「おはよう。転生者のお嬢ちゃん。俺はラグアって言う。」
女の子はもう一回気絶した…。
ねえなんで?俺なんか悪い事した?
とりあえず、もう一回目を覚ますのを待とう。
一瞬、エリス達を呼んで話をしようと考えたが、アイツらもダメだ。
アイツらのお話は、対話じゃない。
ただの恐喝だ。
俺は自分の事を完全に棚に上げて、脳筋の部下達の事を思う。
おっ目を覚ました。
よし、にこやかに。
と思うと。
「なんでもしますからっ、殺さないで下さいっ」
と女の子は叫んだ。
ええー、まず初対面なんだし、自己紹介とかさ?
いろいろあるじゃん?
常識って大切だよ?
ラグアは自分のぶっ壊れた常識を、完全に棚に上げてそんな事を考えるのだった。




