第641話白天の招集
ラグアがコレートルを事実上の敗走に追い込んでから3日後…
〜旧コレートル支配下第3宇宙、とある惑星〜
「ふーん?使者ねー?お前があの天下の白天様のねー?」
玉座に深く腰かけた茶髪に不健康そうな青白い肌の少年は疑わしそうな目でそう言った。
「貴様無礼だぞっ!!ミリス様をどなたと心得る!?ミリス様は…!?っ」
ミリスと名乗る存在と共についてきていた男が喚きたてるが、玉座に座る少年がほんの僅かに殺気を放つと泡を吹いて倒れる事となる。
「うるさいよ。僕はうるさいのは嫌いだよ。てか君誰だっけ?何しにきたんだっけ?もう忘れちゃったよ」
玉座に座る少年…その力は並のオリジンゴッドを超越していた。
そんなテリーローグはミリスと名乗る女をあからさまにナメた視線で見つめると言った。
「お戯れを…テリーローグ様。先程申し上げた通り、私は惑星国家イグロシアル、星帝候補生の1人…ミリス・イグロシアルと申します。元コレートル陣営、コレン隊ナンバー2のテリーローグ様に、父上よりの宴の招待状を預かっております」
星帝候補生…ミリスはそう名乗った。
それは惑星国家イグロシアルにおいて、ラグアとルルの遺伝子を掛け合わせて生まれた存在にも関わらず、リーゼだけが名乗る事を許されているエルライド姓どころか、ルルの姓であるオルガット姓を名乗る事も許されない者達…
つまり最初のリーゼの選別で見込みなしと判断された者達だった。
何故そんな彼女が現在ここにいるのか?
それはリオーナとリーゼで考えた結果だった。
リオーナ達の狙いは不穏分子の炙り出し…
一度に多数の宇宙を支配下におく必要がある上、時期的にも決して良いとは言えない今回、体制を大きく変える余裕もなければ、コレートルの残党…その上位者達を力で抑えつける事のできるイグロシアル最高戦力達を派遣する余裕もない。
武力制圧は必要最低限に留める必要がある。
ならどうするか?
どうなってもいい使者を送りつけて、反乱分子を炙り出す。
なんなら使者が1人や2人ぐらい殺されてもいい。
各宇宙の上位者達に使者を送るのは同時ではない。
数日ずつ時間をずらして送り込む。
そして敵対が確定した者は完膚無きまでに全力で叩き潰す。
見せしめである。
どう転んでも損はしない完璧な策…
リオーナ達の今回のそれにはそんな意味があった。
「白天様の宴ねー?まあ白天様がコレートル様とフォースアイの方々を壊滅にまで追い込んだのは聞いてるよ。まあ君には興味はないけど宴には参加させてもらうよ。コレートル様を破った白天様が仕えるに値する主かどうかをこの目で確かめたいしね?」
テリーローグは言った。
テリーローグ…いや、旧コレートル陣営はコレートルの方針のせいもあるが、そのほとんどが武闘派…それも力が正義とまで考えているものが大半だった。
そんな彼らがコレートルを破ったラグアに興味を持たないはずはなかった。
こうしてラグアの危惧していた、コレートル残党による反発は杞憂に終わり、全ての宇宙の旧コレートル陣営の上位者達が宴への参加を表明するのだった。




