第630話対悪食戦線56
シャドウリオーナは口角を吊り上げる。
乱戦の立役者はこれで全員揃った。
未来予知には2人が乱入する未来が見えていた。
そして、2人はそれぞれの目的の為に動く…
「発動、概念、消滅」
「まずは失った神格エネルギーを補充させてもらうよ?」
シャドウエリローズは神格エネルギーを込めながら消滅の概念を発動…
シャドウリーゼはシャドウリオーナによって失った神格エネルギーを取り戻す為にミュラ達に襲いかかる。
どっちだ?
どっちに動く?
正確にはミグはどっちを優先させる?
ミグの感情には動揺の色が色濃く見える。
このまま放置はありえない。
未来予知で見える未来には、どちらに動くミグも見える。
賭け…
いや、自分なら予測できるはず。
ミグがどちらに動くぐらい簡単に…
シャドウリオーナは刹那のその瞬間にふと考えた。
自分ならどうするか…
いや、そもそも自分がミグならどちらにも動かない。
最優先で最も脅威度が高い存在…
つまり自分を始末する。
なら次に脅威度が高いのは誰か?
そう考えたシャドウリオーナの行動は既に決まっていた。
シャドウリオーナは右手に全神格エネルギーを込めながら概念、神毒を発動させる。
今回使う毒は決して強いものではない。
ただ神格エネルギーを暴走させるというもの…
もちろんそんなものでミグを殺せるはずなどない。
おそらくミグは神格エネルギーの暴走を止める為と、そこにいる脅威を排除する為にゴッドバーストを放つはず。
そこまでわかっていれば…
やりようはある。
いかにアラウザルゴッドといえども…
そもそもどこにミグが現れるかなど通常はわからないが、今回に限って言えばそれは確定だ。
未来予知と感情を読む能力からミグがどのタイミングでどこに現れるかをシャドウリオーナはわかっていた。
シャドウリオーナは勝利への第一段階の成功を確信する。
シャドウリオーナはなんの疑いもなく、シャドウエリローズの方に動く。
だが…
「ぐっ…ゲホっ……なんで…」
シャドウリオーナが向かった方と逆側…
そこにはミグの手により、八つ裂きにされたシャドウリーゼがいた。
そう。
シャドウリーゼのその言葉からもわかるように、シャドウリーゼもまた、ミグはシャドウエリローズの方に動くと予想してたのだ。
だが…
「…読心で読んだ行動と全く違う…そっか…そうゆうことか。お前本当に頭いいんだね?」
一気に最深層まで読心でシャドウリオーナの思考を読みとったミグは言った。
一瞬で全ての神格エネルギーを持っていかれたシャドウリーゼは消滅する…
シャドウリオーナはまだ自分が読み負けた事が信じられなかった。
「何故っ!?2分の1?そんなわけないじゃないっ!!あたしが読み負けるなんてあり得ない。確率云々じゃないのよっ!!あんたの思考はあの瞬間にエリローズの方に傾いていたっ!!なのにっ!?」
驚愕を隠せないシャドウリオーナはそう言った。
最後の一瞬…まるで自分の考えが正しいという答え合わせかのように、ミグの感情がどちらに傾いているのかがわかった。
それなのに…
それなのに、ミグの行動は全くの真逆だった。
「難しい事はわかんないよ。たぶんお前は頭が良すぎるんだよ。あたしはただ目の前でミュラっち達がやられそうなのを見たら体が勝手に動いちゃっただけだよ」
ミグは言ったのだった。




