第629話対悪食戦線55
「ええそうよ?鋭治のところに辿りつく前にできる限り消耗してもらうわ」
シャドウリオーナは言った。
消耗…それはもちろん概念融合を示唆している。
その時だ。
この感覚はおそらく読心…
ここまでは読み通り…
対策はできている。
シャドウリオーナは常に同時に多数発動している思考を大まかに4つにわける。
表層…中層…深層…そして最深層…
表層の思考は完全にダミーである。
表層の思考で考えた行動が実行される事はない。
しかもそのダミーの思考は何通りも存在する。
次に中層…
ここで考えた行動は基本的には実行する。
もちろん基本的にはである。
読心を使われたとしても、大抵はここまで見ることで満足するだろう。
その次は深層…
ここでは奇策…
中層で考えた行動の裏をかく行動を考える。
だが、ここまでの思考は全て幾重にも読心の対策を重ねた完全なるダミーである。
最後に最深層…
これはシャドウリオーナの思考の本命である。
ここまで読まれることは絶対とは言わないが、限りなく0に近い。
何故ならダミーの思考を読むだけで読心は十分に機能するから…いや、少なくとも機能しているように見えるからだ。
「へぇ…お前すごい頭してるんだね?ラルファも頭いいと思ったけど、お前は違う意味で化け物だね」
ミグが読みとったのはシャドウリオーナの思考の表層に過ぎない。
「あら?褒め言葉と受け取ろうかしら?ねえ?聞いてもいい?あなたの目的は?」
シャドウリオーナは言った。
だが、そんなものはわかり切っているし、そもそも興味がない。
シャドウリオーナの目的は時間稼ぎだ。
ラグアの準備ができるまでの時間稼ぎ…
それもそうだが、それ以上にシャドウリオーナの未来予知にはここで乱入してくる人物が見えていた。
「!?っ誰?」
ミグは突如後ろを振り返る。
そこには…
「ああ、もう全てがどうでもいいですよ…。オリジナルを名乗るラグア様には捨て駒扱い…。代わりのラグア様はオリジナルに臆して完全に牙が抜けてる上、目の前の敵に対する勝機は希薄…どうせ私はクソガキの宇宙に舞い戻る事なく、ここで散るのが運命…。ですがそれも仕方ありません。それが定めだというのなら…」
現れたシャドウエリローズはそこで一度言葉を切る。
「全てを巻き添えにして、私が生きた証を残すのも一興ですよ」
そしてシャドウエリローズがいい終わったそのタイミングでさらに転移してくる者がいた。
「リオーナぁぁぁ!!てめえ、よくもやってくれたよなぁぁぁ?どいつもこいつもリーゼの邪魔ばっかしやがって!!上等じゃねーかっ!!てめえら全員皆殺しだっ!!」
瞳に狂気じみた怒りの炎を燃やすシャドウリーゼはそう言った。
乱戦の幕が今開かれる…




