第626話対悪食戦線52
時はラグア達がコレートルの宇宙に二度目の侵攻を仕掛ける少し前まで遡る。
〜シャドウラグアの宇宙、主星イグロシアル近郊〜
そこには既にシャドウラルファを加えたミグ陣営が勢揃いしていた。
「ああ、感じる…ラグアの気配が…どれだけ待ち焦がれたか…ねえぇぇぇ?ラグアぁぁぁ?お前も会いたかったよねぇぇぇ?」
瞳に狂気の炎を燃やしながらミグは眼前に見える、主星、イグロシアルに向かって叫んだ。
「さすがはウチの大将だね。ラグアの前に控えるウチらでも危なそうな化け物達なんかまるで眼中に無しか」
若干の嫌味を込めてシーラはそう言った。
「こいつのこの性格は今にはじまった事ではない。ならばラグアまでの道は妾達が切り開くとしよう」
とミュラ…
「しゃーねーな。志の高いリーダーに従えて俺達は幸せものだな?」
ジオもそう軽口を叩いた。
その時だ。
「ミグ。さっそく出迎えがきたぞ?」
真剣な顔つきでロロが言った。
それと同時に主星イグロシアルから無数の人影がミグ達の方に向かって高速で接近してくる。
「無限分裂ラグアの分体か…舐められたもんだね…」
「ミグちゃん。ここは私に任せて」
敵の質の悪さに若干呆れ気味のミグの前にミュンが出る。
不滅の帝の無限分裂の分体といえど、シャドウラグアの神格エネルギー自体は凄まじい…
神格エネルギーを持たない分体達はミュンを傷つける事はできないが、それでも単純なステータスでは一体一体がミュンを遥かに凌ぐ…
それが無数…
とてもではないが、簡単に止められる相手ではない。
だが…
「発動、神級スキル、技能の神」
ミュンがそう言った瞬間、ある分体は切り裂かれ、またある分体は燃えあがり、またある分体は爆散する…
神級スキル、技能の神はミュンが神級になった時に手に入れたスキルだ。
神級スキル、技能の神はスキルに意思を持たせ、その力を最大限…
技能の神の力により最大…神級スキルレベルにまで引き上げるものだ。
その引き上げたスキルの力は、さすがに特化型の神級スキルには敵わないが、万能型の神級スキルには匹敵する。
そして何より重要なのは、スキルに自らの意思を持たせるという事だ。
ミュンはわかっていた。
自分には才能がない事を…
なら自分が他の強者達に負けない事はなんだろう…
結論はこれだった。
今まで才能の無さの象徴だった、気の遠くなるような時間をかけて大量に集めたミュンの通常スキルと固有スキルが現在は技能の神により、意思を持ちながらイグロシアルから次々と湧き出るラグアの分体を、出てくる側から葬っていた。
「ミュンちゃんありがと。ここは任せたよ?」
「うん、ミグちゃん」
ミグはミュラと短くそうやりとりした後、敵の次の動きに注視するのだった。




