第618話調停者
「………」
沈黙…
オルメテウスは何も言わない。
だがそれはエルミナやラグアから見た目線だった。
コレートルの頭の中にはオルメテウスからの神通による声が響いていた。
『コレートル…今のうちに退け…』
オルメテウスのその言葉にコレートルは単眼を僅かに見開いた。
それはオルメテウスが自分に対して神通をつけて声を飛ばしてきたこともそうだが、それより…
『オルメテウス。どうゆう風の吹き回しだ?お前が儂を助けるなど…そもそもお前は儂の様な外道を毛嫌いしていたのではないのか?』
『コレートルだけが好かん訳ではない…もっと言うなら…私はお前達イナゴのほとんどが好かん…秩序も無しに好き放題暴れ回るお前達全員が…』
『何を言っている?助けられてこんな事を言うのもおかしな話だが、それが儂らの本質ではないのか?世間…最高神の間では儂らはこう呼ばれている。意思を持った災害…すなわち理不尽なイナゴと…』
『おそらくお前には一生わからん…だから黙って退け…イナゴ…いや…全宇宙の調停を守るのが私の務め…第二のラピロアなど絶対に誕生させてはならない…』
『そもそもここは儂の宇宙なのだが?何処へ逃げろと?』
『そのぐらい自分で考えろ…お前の宇宙は…もう諦めた方がいい…できる限りは食い止めるが長引けばラピロアも出張ってくる…あれは強い弱いとかそんな次元でない…ヤツがその気になればヤツ以外の全ての存在…言うなれば全宇宙もろとも塵と化す…話は終わりだ』
オルメテウスはそこで神通をぶった切ると言う。
「エルミナ…残念だが…ここは私も譲るわけにはいかない…退いてもらおう」
オルメテウスは構えた。
その時だ。
コレートルが転移をはじめたのは…
「逃すかよっ!!」
俺はコレートルの転移を妨害しようとするが、一瞬金縛りにでもあったかの様に動けなくなる。
ほんの一瞬だ。
だが、アラウザルゴッドであるコレートルが転移するにはその一瞬があれば十分だった。
「くかかかっ、やってくれたなあオルメテウスよお?」
エルミナはオルメテウスに話してるにも関わらず俺に流し目を送る。
あー、やっぱイナゴは似た者同士って事か。
「エリローズ。準備しろ。オルメテウスとか言うヤツに落とし前つけさしてやらあっ!!」
俺のその言葉にエルミナは満足気に口角を吊り上げる。
「いいぜ?オレも、のってやるよ?悪く思うなよ?3対1でボコられるのはお前が招いた自業自得だからな?」
エルミナのその言葉でオルメテウスとの戦闘がはじまるのだった。




