第594話対悪食戦線33
「さあ、大将首もらうよ?」
シーラは他の存在を一切無視してシャドウラルファを一直線に目指す。
その行動は、他の者達の…つまりはシャドウラルファ以外の神格エネルギーでは、自分にまともなダメージを与えられない事を知っていたからだ…
だが…
「えっ!?」
突如、横からの攻撃でシャドウラルファに攻撃しようとしていた方の腕が吹き飛ばされる。
更には反対側からの攻撃でもう片方の腕まで吹き飛ばされた。
仕舞いには両腕を失って無防備になったシーラは正面から接近したシャドウラルファに真っ二つにされてしまった。
「は?なんでこんな雑魚共がウチに…」
ミグの黄泉の神によりシーラはすぐに復活するが、状況を理解できていなかった。
「あのバカ…。ミュン以外の全員で出るぞ?バカを助けるぞっ!!」
ロロがそう言うとミュン以外のメンバーはそれぞれ動き出す。
さすがにこの状況下では、ミュンは戦力外と呼ぶしかなかった。
復活したシーラを再び集中砲火で倒したシャドウラルファは、ロロ達の動きを横目に一旦距離を取りながら指示を飛ばす。
「ロニーは赤髪の吸血鬼の女を…イグリースは悪魔の男を…イグリースと四天王3人は黒い男と異形の敵を早急に倒して他の援護に回って下さい。最初に突っ込んできた方とリーダーの男は私が受け持ちます」
シャドウラルファのその指示にロロは少し目を見開く。
盤面全体を見た的確な指示と言うべきか…
しかもこの切迫した状況でそんな指示を出しながら、この機に反撃を仕掛けようとしたシーラの攻撃を触手の一撃で粉砕している。
大きくダメージを負ったのはシーラの方だ。
「なんつー頭してやがる…」
ロロから出たその言葉は紛れもない本心だった。
そんなロロにシャドウラルファは薄く笑う。
「ふふっ、私程度の頭でそんな事を言う方はおとなしく帰った方がいいですよ?リーゼお姉様はこんなものではありません。私が認識できるのは、所詮見える範囲でしかありませんので…」
シャドウラルファはオリジナルリーゼやシャドウリーゼとは違い、未来予知を使いこなせる訳ではない。
ただ単に超高速回転させた多重思考により、その場その場にあった臨機応変な指示を飛ばしているにすぎない。
まあそれをただと言ってしまえるのは、この宇宙…いや全宇宙を探してもほんの一握りの天才だけなのだろうが…
「それでは皆様。私も可能なら援護はいたしますが、さすがに私も2対1のこの状況下では全てをカバーするのは不可能です。可能な限りご自身での対処をお願いします」
言いながらシャドウラルファは千手観音モードを展開したのだった。




