第592話対悪食戦線31
「キャハハハっ、でかい口を叩いといて4人がかりでそんなもん?その程度の力であたしに勝てると思われてたなんて、あたしも舐められたもんだねー?」
4対1の状況の中、全ての攻撃を片手間に捌きながら余裕の表情でミグは言った。
「ギャハハっ、やっぱ強えーな?さすがはオリジナルのおやっさんと同じアラウザルゴッドってとこか?」
言いながらシャドウルーグは更に攻撃を苛烈させる。
シャドウルーグはイグロシアル最高戦力ではない。
神格エネルギーだけは上位勢と大差ないが、シャドウもオリジナルもその性格の扱いにくさから、最高戦力からは外されていた。
そして獲得している概念は僅か1つのみだ。
そう。
そのたった一つの概念がシャドウルーグが他の概念を獲得する事を邪魔していたのだ。
「発動、概念、起源」
ルーグがそう言った瞬間、元々オッドアイだったルーグの瞳はラグアの真っ赤な瞳とはまた違う、どす黒い赤に染まる…
概念、起源…
起源にして唯一無二の概念…
この概念を獲得できるものは、他の概念を持っていない者のみで、獲得してからは他の概念を獲得する事ができなくなる。
オリジンゴッドの根幹に関わる概念で、全ての概念の起源とも呼ばれる。
他に類をみないマイナス効果と引き換えに、その能力は絶大である。
「はじめて聞く概念だねー?まあなんでもいいや。もう飽きたよ。死ね」
ミグはそう言いながら、触手の一撃でシャドウルーグを切り裂こうとする。
その速度も威力も先程までの比ではない。
だが、現在のミグもまるで本気ではない。
ほんの僅かだけ…ミグが実力を解放したにすぎない。
たったそれだけでシャドウルーグの命は消えようとしていた。
だが…
「え?嘘?止まった?」
袈裟がけに切り裂こうとしたミグの触手は、シャドウルーグの肩口をほんの数センチ切り裂いただけで静止する事になった。
「死ぬのはてめえだっ!!」
今度はシャドウルーグの一撃がミグに迫るが、それがミグに当たる寸前でミグはシャドウルーグの前から消え失せる。
少なくともシャドウルーグにはそうとしか見えなかった。
「キャハハハっ、予想外だよ。しかも何故だか知らないけどあたしの神格エネルギーは減って、お前の神格エネルギーは増えてるときてる。いいねーお前面白いじゃん。あたしそーゆーの好きだよー。ラグアの前の前哨戦にちょうどいいね?」
そう言ったミグの目は既に、シャドウルーグの事を先程までの様な有象無象の雑魚という扱いから、警戒すべき敵として認識を改めていた。




