第589話対悪食戦線28
シャドウリオーナがシャドウラグアの宇宙に戻った頃…
〜シャドウラグアの宇宙、第十惑星〜
「はあっ…はあっ…ミグちゃん、お姉ちゃん。私だってつゆ払いぐらいはできる」
ミュンは息を切らしながら言った。
「つゆ払い?俺様を誰だと思ってる?第十星帝、ゲール・オルガット・イグロシアル様だぜ?そうそうにくたばっちまった、使えねー星帝補佐とは違って俺様は下級魔神なんだぜ?」
ゲールと名乗ったその存在は、真っ白に乱雑に入った青色メッシュの髪をかきあげながら言った。
下級魔神とは言え、シャドウラグアとシャドウルルの遺伝子を掛け合わせて生まれたシャドウゲールは下級魔神が成長限界ではない。
神格エネルギー自体はミュンを超えていた。
「…ここまでだな」
そう言ったのはミュンの姉である、ミュラ・ゾフィスだ。
ここまで全ての敵はミュンの希望に任せてミュンが倒してきた。
基本的にミュンに甘いミュラやミグはそれでもいいと放っておいた。
だが、さすがにここまで実力が切迫…それどころか相手がミュン以上の存在となれば、そうも言っていられない。
ミュラはミュンとゲールの間に割って入る。
「なんだー?てめえ、俺様とそこの姉ちゃんの戦いにケチつけるのかー?」
「そうだな。ここからは妾が相手させてもらおう」
ミュラは言いながら暴力的なまでの神格エネルギーのオーラを全開にする。
その神格エネルギーは並のオリジンゴッドを遥かに凌ぐ…
「ちっ…確かそこの姉ちゃんの姉貴だったか?化け物じゃねーかよ…。可哀想になあ?同情するぜ?俺様にはお前の気持ちがよくわかるぜ」
ピク…
ゲールの言葉にミュンは少し反応しただけだが、ミグは表情を怒りに変える。
「どーゆー意味かなー?ミュンちゃんの気持ち?お前死にたいみたいだね」
殺気を全開にしながら言った。
ミュンに対してこの手の話は禁句である。
そんなミグに対してゲールは笑いながら答える。
「くくくっ、てめえ強いわりに頭はわりーみたいだな?そんなんじゃ自分で言ってるようなもんだぜ?俺様がそいつの気持ちがわかるってのは本当だぜ?姉妹でそんなに差をつけられちまってなあ?知ってるか?俺様達星帝ってのは番号が若ければ若い程、生まれた順番が早い。そして2桁や3桁番台には例外もいるが、1桁番台の星帝は生まれた順に強い。この意味わかるか?」
ゲールのその言葉に対し、誰も口を開かない。
ゲールは続ける。
「兄や姉はどいつもこいつも化け物…特にリーゼの姉貴やルーグの兄貴は次元が違う。ルーグの兄貴なんか影の最高戦力なんて呼ばれてんだぜ?まあ、ルーグの兄貴は命令無視が酷すぎるから親父は使わねーがな?そんな存在に囲まれて育つとよ?自分が落ちこぼれでなんの価値もない存在だってことがよくわか…」
「黙れっ!!」
話している途中のゲールをミュラは引き裂いた。
「ぐっ…くくっ…図星か…」
ゲールはそのままコト切れる。
後に残ったのはなんとも言えない重い空気だった。




