第558話シャドウ2
エリス・エルライド…
それが今の彼女の名だった。
魔王ラグア・エルライドの側近…
最高幹部にして総統…
そんな肩書きは今では遠い過去の様に感じる…
現在の彼女の肩書きはこうだ。
イグロシアル九天内序列第一位…狂神、エリス・エルライド…
そう呼ばれだしたのはいつからだろうか…
そう復讐に狂った神…
かつての主の幻想にいつまでもしがみつく狂った神…
私にはお似合いだ。
もっともその様な事をのたまった者達は皆殺しにしたが…
私はともかくそれは今は亡きラグア様に対する侮辱でもある。
玉座の隣…そこに作った席に腰掛けながらエリスはそんな事を思う。
「おや?エリス様、今日もそちらでよろしいのですか?」
「はい、エリローズ様。ここに座るべき存在は私ではありませんので」
エリスは脇に立つエリローズにさも当然の様に答えた。
「ラグア様ですか…。エリス様…!?っ」
エリローズが言いかけたその時だ。
突如玉座の前の空間が裂ける…
こんな事ができるのは最低でもオリジンゴッド級の化け物だけだ。
上級魔神クラスでもなんとかできるかも知れないが、ここまでスムーズにはいかない。
確実にオリジンゴッドクラス…
まさかあのジジイか?
そう思ったエリスの思考は真っ赤に染まる。
ヤツだけは許さない!!
ヤツだけは必ず差し違えてでも自分が殺す!!
ラグア様を手にかけたヤツだけは絶対に!!
だが、そんなエリスの思考は強制的にストップされる。
何故ならそこにたっていたのは…
「…ラグア…様?」
夢にまでみた敬愛すべき我が主…唯一絶対の神の姿だったからだ。
〜
「らっラグア様っ!!幻覚?この際幻覚でもいいですっ!!お会いしたかったです!!うぅぅぅぅぅ!!」
さて、この時代の謎を知る為に約100年後のイグロシアルにやってきたのだが、俺を出迎えてきた号泣するエリスだった。
〜10分後〜
「落ち着いたかエリス?エリローズ、エリスはこの状態だ。エリローズ。お前が説明しろ」
「ラグア様。私も混乱しているのですが…」
エリローズは言った。
〜
それからゆっくり時間をかけてわかった事だが、この時代の俺はオリジンゴッドになる時に支配の概念をとったらしい…
結果最初のジジイとの戦いでジジイに敗北…
俺は戦死する直前に森羅万象を解除…
エリローズは俺がやられる一瞬の隙をついてジジイにかなりの深傷を負わせたが、形成不利とみたジジイが例の白い霧でまとめてイグロシアルに向けてぶっ飛ばした。
そうゆう事らしい。
「ラグア様をお守りできなかったのは全て私の責任ですっ!!いかなる罰も…」
こちらが一方的に聞いてたせいか、全く状況を飲み込めていないエリスがそんな事を言った。
「あー、エリス。今の俺はお前にそんな事をできる立場じゃない。まあする気もないが…この意味わかるか?」
「「???」」
〜さらに10分後〜
俺はエリス達に俺の正体を打ち明けた。
何故かって?
いや、さすがにね?
敵はともかく仲間には甘い…前にリーゼやミグがそんな事を言ってたな。
たしかにそうかも知れない。
まあ、ここまで言えばさすがにわかるだろう。
リーゼの外道とも言える計画が…
リーゼの計画は俺と俺の仲間の影武者をフルセットで作っていざと言う時の替え玉に仕立て上げようとしているのだ。
しかも大量に…
それをリーゼはアラウザルゴッドとの戦いの最中、もっとも効果が出る盤面で使用する事を提案してきた。
無論、影武者達の生死は問わない。
この場合未来に俺は存在しないようだから、俺の影武者は過去から見繕うしかないが…
次にそんな影武者達を用意できたら、過去に戻り…黄泉の神入手直後のミグを倒して黄泉の神を強奪…
あとは用意した影武者を全て一度俺自身の手で皆殺しにしてから蘇らせる。
影武者として俺達の思い通りに動いて、強化されて替え玉になるならそれもよし。
力をつけて俺達から脱しようものなら黄泉の神で全てを吸い上げる。
うん…
これまじで俺が可愛く見えるほどの最悪の作戦だよな…これ…




